擬似資本

 中小企業診断士試験の1次試験まで、あと残すところ1週間になってしまった。
 昨年、unizouはなんとか1次試験を突破したものの、その前の1か月の学習の仕方には反省点が多かった。
 というのは、受験支援校で行われる模擬試験の難易度が高く、その復習に相当程度の時間を費やしてしまって基礎的な内容の学習がしっかりできなかったことだった。
 受験支援校の模擬試験と本番の格差ならぬ落差も大きかった。
 教えてもいないことを模擬試験に出して、落胆させるやり方は何とも違和感を覚えたものだった。
 というわけで、今日は、一次試験を受ける皆さんに、中小企業経営・政策の中で出てくる言葉を一つ取り上げて、少しでも試験勉強に役立てばと思う。・・・役に立たないかm(__)m
 unizouが多くの中小企業の決算書を見てきた経験からすると、診断士試験、特に、中小企業経営・政策の中で印象に残っているのが、擬似資本という言葉だった。
 擬似資本とは、「日本の中小企業では銀行借入が資本金のように認識され、銀行借入は中小企業にとっては、必ずロールオーバーされていたという意味において、自己資本のような認識がある。」(平成11年度経済白書p213)ということ。
 また、「中小企業白書2005年版 第2章 多様な資金調達手法のあり方、第4節 安定した資金調達 2.疑似資本」に詳しい。

 中小企業の資金調達については若干の変化はあるものの依然として、日本の中小企業は自己資本比率が低い状況にある(第2-2-9図〔2〕)。これはアメリカ等と違い日本においては金融機関からの借入れ、特にメインバンクからの借入れに、中小企業にとっては資本的性格を有する資金45が、いわゆる疑似資本として、中小企業の資本を補完してきたことが1つの理由であると考えられる。
 法人企業統計年報を用いてこのような疑似資本の額を推計すると、従業員規模が小さいほど疑似資本の割合が高いものと考えられる
 この種の資金調達は、貸手側からみると、貸出期間を短期化することで、情報の非対称性が高い企業のモラルハザードを防止する効果がある。また、借り手にとってもモラルハザード的な行為及び急激な業績悪化がない限りは融資が反復されるため、実質長期資金としての資金調達が可能となるなど、一定の意義が認められる。しかしながら、その一方で近年、借り手側と貸手側の認識の違いによる問題点が指摘されている。つまり、借り手側は継続的に借り続けられる資本的な安定資金と認識しているのに対して、貸手側は、期限付の貸出であるので、期限が到来すればいつでも返済を要求できる資金と考えていることであり、何らかの対策をとることが求められている。

 擬似資本のことを学習した際に、もう10年くらい前になるが、酒造会社の融資を担当したことを思い出した。地方の酒造会社は、よほど全国的に有名な名酒を作って堅実にやっていかない限り、最近女性の愛飲家が増えているといわれるものの、日本酒の消費量の落ち込みは大変なもので、経営が難しい状況である。その会社もご多聞にもれず、安い酒を作って大手酒販店のブランドで売る以外に生き残る道がないような状態だった。
 そして、擬似資本に関していえば、地方の信用金庫や信用組合からの借入金も相当な金額になっていて、さらにひどいことは、1億円の小切手を、毎年利息を加算して繰り延べしていたような状況だった。
 数年後その酒造会社は倒産し、その酒造会社だけでなくそういった融資を重ねていた信用組合も破綻したというように聞いた。
 中小企業の経営は、いいものを作る能力だけではやっていけないということで、作ったものを販売する能力、そして、作り販売するためには、資金を調達する能力も求められているのだ。
 ところが、unizouはいろいろな会社のいろいろな社長さんに会うが、それらの能力を併せ持っている人に会うことが少ないのだ。
 会社経営の何たるかをしらないで会社を設立していることに問題があると同時に、それを許容している社会にも問題があるのではないかと考えてしまうのだが・・・。ヘ(´o`)ヘ