短期借入金と長期借入金

 大石幸紀中小企業診断士のブログ中小企業診断士 大石幸紀 大幸経営有限会社【http://daikou.livedoor.biz/】をいつも読ませていただいている。
 9/22のテーマは「誰か教えてください?中小企業の長期借入金と短期借入金の区分」というものだった。
 役員借入金が本来資本的性質を持っているので長期借入金であるべきなのに短期借入金に、金融機関の借入金は返済期日が1年以内であってもなくても、長期借入金に計上されているということで、短期借入金と長期借入金の区分に疑問を持っていらっしゃるという内容だった。
 数多くの決算書を見ているunizouの経験を話すと、次のようなことになる。

  • 金融機関からの借入金は、証書貸付のように何年返済と決まっているものがすべてではない。手形貸付のように1年ごとに利息のみの返済で繰り延べされているケースもある。長期借入金であるべきなのに、それが短期借入金に計上されているといった会計的には問題ないが、事実とはかけ離れているケースも見られる。こういったケースが金融機関の不良債権となっているケースもあり、いざ返済を迫られると、こういった中小企業は流動比率が極端に悪いので、倒産に至るケースもある。
  • 役員借入金については、金銭消費貸借契約をきっちり結んでいるケースは稀。資金が不足するから、社長から借りるといったケースや役員報酬を支払わずに、運転資金としているケースも見られる。それらが役員借入金として処理され、長期借入金として計上される場合もあれば、短期借入金として計上されるケースもある。
  • こういった事態は、税理士がクライアントの本質的な財務内容まで見ていないケースが非常に多いことに起因する。会社の不明金も、社長に対する貸付金として処理されるケースが多い。なぜ、そうなるかは、法人税の計算や消費税の計算には、影響がないからである。

 結局、中小企業の会計処理は、個人事業者が税金を少なくするために法人成りしたような家族的な企業形態を持つ中小企業では、個人と企業の間の金銭的なやり取りが、非常にあいまいなのだ。
 そして、倒産等においては、個人と法人の責任が明確に区分されているために、責任の追及ができないケースもあり、ステークホルダーにとっては非常に迷惑な話である。
 大企業以外の中小企業にとっては、計算書類の公示もあってないようなもの。
 計算書類の信頼性を高め、中小企業の会計31問31答(平成19年4月指針改正対応版(リニューアル版))にいう「会社の経営分析力、資金調達力、受注拡大力の3つの力を強化するためには、決算書を正しい会計ルールに基づいて作成することが大前提なのです。」といったことは、まだまだ程遠い現実だと思っている。