社長の仕事

 ここ最近、中小企業の社長さんに会う機会が多くなった。
 そして、いろいろ話を聞いていると、「社長のところ大丈夫かな?」と思うことが多い。
 なぜ、そう思うのかというと(このことも、以前から診断士になりたいというひとつの動機になっている)、「社長としての仕事を理解していないな」と、ずっと年上の社長さんで、人生経験も豊富で仕事の技術や人望もある人達なのに、若輩のunizouにそう思わせてしまうからである。
 そう思わせる原因が実際なにかというと、ある本に端的に表現していたので紹介したい。
 社長の仕事は二つ、「売上アップ」と「資金繰り」。 
 「借りる技術返す技術―元銀行融資担当が教える資金繰り (単行本) 小堺 桂悦郎 (著) (フォレスト出版)」
 あまりにも端的に表現し過ぎている嫌いもなくはないが、極端にいえば、そのとおりである。
 「売上アップ」についてはどの社長さんでも、一生懸命やっている。売れなきゃ、お金が入ってこないのは明白だから、誰でも売上を上げようと躍起になって頑張っている。
 ところが、「資金繰り」については、金融機関からの借入れ一本槍である。
 そして、資金繰りが悪化すると親戚・知人を連帯知保証人にして金融機関から借入れし、金融機関から借入れができなくなると、連帯保証人にした親戚・知人から直接借り入れるようになる。
 その資金調達の理由も、その場しのぎで付け焼刃的なことが多い。
 買い物依存症に陥っている主婦とまでは言わないが、お金が足りないから借りる、買いたいから機械や設備を購入するといった風である。
 そして、そういった会社に限って、破綻したゴルフ場の会員権を持っている。
 購入した理由は、「バブル当時に金融機関から斡旋された」という同じ内容の回答である。
 今では、多くが紙切れで、売ることもできず担保価値もない、決算書を賑わしているだけの代物に変わってしまっている。
 資金調達については、unizouが診断士試験を受験するために勉強を始めた2005年版中小企業白書「第2部 経済構造変化と中小企業の経営革新等 第2章 多様な資金調達手法のあり方」に詳述されていて、今までのunizouの経験からもその内容に納得がいくものだった。
 「擬似資本」、借入れに依存した中小企業の資金調達」、「代表者の資質のような定性情報によるリレーションシップバンキング」、そして「トランザクションバンキング」「アセットベーストレンディング」などである。また、資金調達については、今後直接金融などの手法を取り入れることも大事なことだと書かれている。
 10万円の金利負担の差がある場合、売上高対経常利益率が5%であれば、200万円の売上がないとその負担をペイすることができない。
 年間売り上げが、1億円しかにところが200万円の売上を伸ばすことは大変なことである。
 しかし、多くの社長さんは、そんなことは知っていてお構いなしか、知らずにいるのか、無頓着である。「売上でカバーすればいいや!」といった感じである。
 こんな社長さんに身を預けている社員や取引先は、本当にも哀れなものである。
 「税理士が決算書を見ているだろう?」と思う人がいるかもしれないが、税理士でそこまで考えてくれる人は多くないようである。
 そこで、人望があって技術力がある社長さんに「社長の仕事」を理解させるためには、中小企業診断士の出番なのだと思っている。そのことが、unizouの診断士の志望動機のひとつになっている。