事例4 財務(ファイナンス)を中心とした経営戦略に関する事例

 2次試験の事例4は、経営分析を使う問題が出題される。
 経営分析には、総合力を分析するもの、収益性を分析するもの、効率性や安全性を分析するものなど、多様な分析手法がある。
 以前、といっても大分前になるが、決算書を見ることが多い仕事をしていたので、そのときに今述べたような分析手法を実際に使ってその企業を判断していた。
 そのとき一番興味をもってみていたのが、もっともわかりやすい流動比率当座比率、固定比率、そして自己資本比率についてだった。
 なぜなら、多くの中小企業で自己資本比率が極端に低く、そして固定比率が悪い、もっといえば、倒産寸前でないかと疑わせるような流動比率当座比率が悪い企業が多かったのだ。
 そして、診断士の勉強をして始めて、それが一部の中小企業だけでなく、多くの中小企業の課題となっていることを知った。
 中小企業白書2005年版の第2部第2章 多様な資金調達手法のあり方の中で、「1976年までは大企業、中小企業ともに自己資本比率がおよそ13%であったが、それ以降、大企業が自己資本比率を高めているのに対して、中小企業は近年上昇しているものの、1997年まで13%程度でほぼ横ばいに推移してきたことが分かる。また、自己資本比率と金融機関借入金比率の関係を見てみると、大企業は1999年以降、自己資本比率が金融機関借入金比率を上回る水準まで上昇しているのに対し、中小企業の自己資本比率は金融機関借入金比率を依然下回っている。また、自己資本比率が低いほど、金融機関から思い通りに貸してもらいにくくなっており、中小企業にとって自己資本の積み増しが課題となっている」と述べていたからである。
 当時見た多くの決算書の中には、代表者からの借入金が含まれるものも多かった。
 実際に代表者から借入れをしたのかというと、帳尻が合わなかった過不足を毎期代表者借入金や貸付金として処理しているケース、運転資金が足りなくなったために代表者に対する報酬を未払いにし借入金として処理しているケースなどだった。
 これらは、いずれも記帳を怠ったり、会社の規模に応じた正当な役員報酬を算定していなかったりしたことが大きな要因だった。
 しかし、そういった処理の結果、自己資本比率が低く、流動比率や固定比率が低くなってしまった場合、どうしたらいいのだろうか。
 それについても、中小企業白書2005年版に次のように書かれている。

 まず第1に考えられることは、中小企業自身が自己資本の充実を図ることである。
 第2に、コベナンツ(財務制限条項)等を利用し、借り手、貸手の間で継続的な借入れをするための条件を明確にすることが考えられる。コベナンツは信頼性の高い計算書類が作れる企業が対象となるため、第2節で見たとおり、中小企業の会計の信頼性向上に向けた取組が行われており、その進展が重要となってくる。
 第3に、安定した資金調達に変更することがある。この1つの解決手法として、最近デット・デット・スワップ(DDS)が実施されるようになっている。これによって、企業側にとっては借入れの一部を劣後債務に転換することにより、資金繰りが安定し、金融機関側にとっては債務者の実質的な財務状況の分析にあたって、劣後債務に転換した部分を企業の自己資本と見なすことができるなど、双方にメリットがある。
 このような手法は、通常の融資に比べリスクが高くなると考えられ、決済口座がある等でリレーションの構築との対称性の面で、最も優位にあるメインバンクや政府系中小企業金融機関が、これまで先駆的に実施してきている。
 また、このような取組は、他の金融機関へもシグナルを発し、メインバンク以外の金融機関の支援が容易になる可能性もある。

 そして、unizouが一番効果的だと思ったことは、中小企業白書には出てこなかったが、講義で教えてもらったデッドエクイティスワップ(DES)という手法である。DESとは、債務(デッド)と資本(エクイティ)を交換(スワップ)することで、負債を株式化することをいう。
 過剰な負債を抱えた企業の救済措置として、負債を株式化することで、企業側は株式が増えて負債が少なくなり、経営再生を行いやすくなるというメリットがある。また、金融機関側にとっては、企業が破綻して債務が回収不能になることを避けることができ、企業が更生して株価が上昇すると金融機関は配当を得ることも可能になるということで、企業と金融機関との間で行うことが前提になっているようである。
 しかし、実際に金融機関との間で行うのは相当なタフな審査を通過する必要があり、代表者や親族、知人からの借入金を資本に組み入れることのほうが現実的なことだと思っている。
 二次試験で問われるような経営分析ができても、それを解消するための手段を持ち合わせていないと、診断はできても企業を再生することや経営を改善することは難しいと思う。
 できればその手法も問題に取り入れたら、二次試験としては実践的かもしれない。
 でも、今以上に試験が難しくなるようなことを言っては、元も子もないことになってしまう・・・?