仕事の管理(3) 仕事の報酬はなにか

 部下職員のMクン。期限のかなり前から仕事の指示をしているが、期限を守ったことがほとんどない。
 「終わった?」と聞くと、「いただいた仕事以外の仕事が多くて、それをやるには、1日それだけにかからせてもらえませんか?」と聞いてくる。
 「1カ月も2カ月も前に指示しているのだから、その中で仕事をやりくりして終えるのが普通じゃないの?」と話すと、「そうは言っても・・・」と、できない理由ばかり伝えてくる。
 決して処理能力がないわけではないが、こんなことを毎回繰り返して、半年以上が過ぎた。
 当初、Mクンにだけ話したかった期限を守ることの重要性や時間管理の仕方などを、ミーティングの席で全員にオブラートに包みながら話していた。
 しかし、Mクンに一向に変化の兆しがないため、さすがに、unizouも堪忍袋の緒が切れ、先日、一対一で話すことにした。
「任された仕事を終えるのが、プロフェッショナルだよ。時間管理をし、仕事の期限を守ることは重要なことだよ。どんなにいい考えや結果でも、時機を逸していれば、何の役にも立たないんだから。冷めたスープを出されても美味しくないでしょ。スピード感と適切な仕事のバランスが大事だよ」と伝えた。
人に嫌われることをしたくないのがunizouの本心なのだが、Mクンの将来を考えると、伝えざるを得ない。
 先日、書店で立ち読みしていた小学館の週刊誌DIME ナンバー05、06に、「デキる上司、気のきく部下」という特集記事が掲載され、興味があったので購入した。
 特に、多摩大学院の田坂広志教授の「本気で部下、上司と『正対』していますか」には、今回のMクンとのやりとりに示唆することが多かった。

 部下は動かそうとしても動かない。

 組織が大きな成果を挙げるには、メンバーひとりひとりが自分の役割を理解し、主体的に行動することで、個人ではなしえないチーム力を発揮する必要があります。上司は部下にスムーズに動いてもらうべく、様々な配慮をしますが、その時点ですでに本質が見失われているのです。部下に対しどれほどの好意を示し、気配りをしても、それが、自分の意のままに他者を動かそうという、操作主義の下で行われているのであれば、部下からの信頼は得られず、動いてくれません。
 部下は、自分たちのためではなく、自分たちを動かすために上司がやっていると感じた瞬間、動かなくなる。人とは、そうした相手の本心を恐いくらいに敏感に嗅ぎ取ってしまうものなのです
 人を説得する、部下のモチベーションを上げるといった、テクニックやノウハウをいくら駆使しても、それが操作主義に基づいている限り、うまくいかないのは当然の結果なのです
 ただ、操作主義のマネジメントでも、部下が動いたかに見えるケースもあるという。部下が上司の人事権などを意識し、部下の側にも「計算」が働いている場合などだ。そうした打算で動いているチームは、メンバー関係の信頼関係は生まれず、徐々に弱体化していくことは明らか。

相手への敬意がすべての基本

 正対主義とは、上司がひとりの人間として、深い敬意をもって、部下という一人の人間と正面から向き合うことです。これを肝に銘じるだけで、コミュニケーションの質が劇手に変わるのです
 時には、自分が若手だった頃を振り返って、どんな気持ちで仕事に取り組み、悩んできたかを思い出しながら、部下の気持ちを理解する。上司が部下の意見を聞くという、表面的には同じような光景があっても、上から目線の操作主義と、部下をリスペクトしながら向き合う正対主義とでは、そこで交わされているコミュニケーションの質は決定的に違ってくるのです
 相手のことを真剣に考えて叱咤するならば、その気持ちは必ず伝わります。そうした姿勢を通じてしか、深い信頼関係をきずくことはできません。その結果、本当に大切な仕事の報酬である、能力・仕事・成長を部下に送ることができるのです。

 Mクンの能力に尊敬の念をいだきながら、さらなる能力の向上と成長を送るため、逃げずにMクンと正対しようと思う毎日である。