アンタッチャブル

 ケヴィン・コスナー主演の映画「アンタッチャブル」を観たのは、ずいぶん前になる。
 アル・カポネを演じるロバート・デニーロの演技、ショーン・コネリーアンディ・ガルシアのかっこよさを今でも覚えている。
 禁酒法下のシカゴは、密造酒ともぐりの酒場で地下経済の規模は10億ドル市場になり、ギャングたちの縄張り争いの中で、マシンガンや手榴弾により市民の生活まで脅かしていた。財務省から特別調査官としてシカゴに派遣されたエリオット・ネスは、アル・カポネ逮捕の使命感に燃え、ジミー・マローン(ショーン・コネリー)、ジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア)やオスカー・ウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)とともに様々な困難を乗り越えてアル・カポネを逮捕するという映画だ。
 この映画の中でギャングのボス、アル・カポネを逮捕し刑務所に送り込むことができたのは、殺人や暴行という罪ではない。脱税容疑である。
 映画はフィクションもあり、エリオット・ネスが脱税容疑を調べたということではなく、実際のところは違う人物が脱税調査をして連邦大陪審訴訟で、脱税、ボルステッド法違反で告発され、アル・カポネは懲役11年を宣告され、1932年から刑に服したということらしい。

 ギャングは、日本で言えばやくざである。
 前にも書いたが、今のやくざは、昔のやくざと違って「堅気に迷惑をかけない」という不文律はすでにない。
 また、完全なピラミッド組織で、トップに立つのは会社の出世より厳しくて、下っ端は、振込詐欺など弱者に対する犯罪など違法なことに関わり、得た金を組織に上納するだけである。いつでも、組織に命を捧げる覚悟をさせられ、命を狙われ、幹部に搾取されながら不安な毎日を送らなければならない。普通の生活よりずっと馬鹿げた損な生活である。
 やくざになるのは、良い服を着て、おいしいモノを食べ、良い車に乗りたいためである。まるっきり、普通の人と同じである。金を稼ぐ方法が、違法かそうでないかの違いである。
 暴力団が違法なことをし、また、映画「アンタッチャブル」のように一般市民の生活を脅かすことは許されないことであり、組織を壊滅させなければならない。
 しかし、暴対法などが整備され、市民の暴力団撲滅に取り組んでいても、暴力団組織は無くならない。
 きっと、組織を壊滅させるのに必要なことは、映画「アンタッチャブル」のように脱税などで摘発し、金の流れを止めることなのだと思う。
 エリオット・ネスをWIKIPEDIAに調べると、次のような記載があった。

 ハーバート・フーヴァーの大統領就任後、財務長官アンドリュー・メロンはギャングのアル・カポネを摘発するよう厳命した。連邦政府はこれについて、ニ方向からのアプローチを試みた。すなわち所得税の脱税と、ボルステッド法(国家禁酒法)への違反である。ネスは後者、具体的にはカポネの酒の密造と違法流通に関する調査の主導を任された。

 日本も本気で暴力団を壊滅しようと思うなら、アメリカ同様に脱税などで摘発することが大事なのだと思う。そのためには、警察と税務当局が徹底して協力するような仕組が必要なのかもしれない。ちなみに、イタリアでは、財務警察(経済財務省の所属)が、脱税、密輸から麻薬取引などを中心に捜査しているという。
 法以外に誰からも束縛されない、自由な生活ができるような世の中にぜひ早くなってもらいたいと思う。