産業財産権と特許庁

 昨日のTBS「報道特集」で、「総額260億円!国家重要プロジェクト頓挫の裏に・・・」 (2013/3/2 放送)として、「昨年、予算総額260億円の特許庁システム開発が頓挫し、開発失敗の裏側で何が起きたのか、その真相に迫る」という内容が報道された。
 審査業務の迅速化につながる新システム導入を目指して、3社による一般競争入札の結果、技術評価は最も低かったものの、予定価格の6割以下の費用を示した東芝子会社の東芝ソリューションが約99億円で落札、2006年に開発が着手された。当初は11年1月に稼働予定だったが、07年ごろから設計・開発が大幅に遅れ始め、東芝ソリューションは1000人超の体制で巻き返しを図ったものの、事態は好転せず、稼働予定時期を12年1月、14年1月、17年1月と繰り返し延期した。開発が頓挫した原因は、同社が、特許庁の特殊な業務内容に精通していなかったことが響いたということだった。

 産業財産権のことは経営法務で習うが、特許庁は企業競争、最終的には国際競争に欠かせない産業財産権特許権実用新案権意匠権、商標権)を扱う重要な官庁である。
 各国では、自国の産業を守るために、産業財産権の審査に掛かる期間を短縮する目的で特許システムのIT化を進めている。
 こういったことは、安部政権が進めている成長戦略を進めて行く上で、ベースになるものだろう。
 それが、巨額な予算を掛けても実現できなかった特許庁の責任は重い。
 それなのに、この問題に関する特許庁の回答が、請け負った東芝ソリューションの責任のみを言及し、自分たちの責任に一切触れていないことに違和感を覚えている。
 「だから、役人は親方日の丸だ」と国民が口を揃えて叫んでいる姿が目に浮かぶ。
 今回の件は、国民の税金を無駄にしただけでなく、「企業や個人が発明や発見により産業の発達に一生懸命寄与しているのに、国がその足を引っ張る」という日本の浮沈にも関わる由々しき問題であると思う。

 以前公務員のKクンから、「役所のシステム開発に掛ける予算や人員は流動的で、最初から資金が潤沢にあるわけではないので、計画が中途半端、人が足りない、計画から実施まで一定の人が一貫して携わらない、核となる上級幹部がころころ変わるといった理由で、必要以上に苦労が多いし、最終的には予算も多くかかり、挙句にやっているうちに時代遅れになってしまう」と聞かされたことがあった。
 きっと、最前線で携わる下級公務員は、昼夜を問わず一生懸命やっているのだろう。
 問題は、コロコロと1〜2年で変わる責任を問われない上級幹部ということなのだろうか。
 さて、城山三郎の書いた「官僚たちの夏」では、主人公の佐橋が「出世レースには敗れ特許庁長官になった」というように描いていた。きっと、今でもそうなのかもしれないが、特許庁経済産業省(当時は通商産業省)より格下ということなのだろう。
 しかし、世の中、誰もがそれぞれの持ち場を全うすることがとても重要なのだ。
 特許庁の職員も、国の浮沈にかかわる重要な仕事をしているという認識を持って、民間のサポートをしてもらえればと願うばかりである。

 特許庁システム開発には、孫請け企業に暴力団関係者が経営する企業が関わっていたという。これについては、暴力団排除に絡めてブログにコメントしたいと思う。