アベノミクスと本当の豊かさ

 車に乗ってガソリンを入れたら、ガソリンの値段がずいぶん上がっていた。
 アベノミクスの影響で、円安が進んだせいなのだろう。
 車を使う人や事業者にとっては、かなりダメージが大きいのではないか。
 中小企業診断士の資格を取ったら、運送業やタクシー業の経営改善に取り組みたいと思っているので、今の情勢はずいぶん気になる。
 運送業やタクシー業界は、ずいぶん前から行政に翻弄されてきた。
 一生懸命経営していても、なかなか採算が取れないところが多い。
 東日本大震災の時、物資が届かないことで生活にどれだけの影響が出たかを考えれば、物流はとても大事なのに、経営基盤が弱い会社がいかに多いことか。
 大手でなく、下請けになればなおさらである。
 そして、今回の円安である。
 実は、最近タクシー会社の社長さんと話をしたら、「燃料のLPガスが値上がりして、経営が大変だ」とこぼしていた。
 アベノミクスは、本当に大丈夫なのだろうか?
 このままでは、円安の影響で、運送業界やタクシー業界だけでなく、加工品の材料などを輸入に頼っているところが、先に参ってしまうのではないか。
 インフレターゲットはいいことなのか。
 円安はいいことなのか。
 生活していて、行きすぎは別だが、物の値段が下がるのは、実際は良いことだ。
 さて、人生の中で、一番お金がかかる時期は、子育てをしている時である。
 子育てをしている人たちの一番の支出は、教育費と住居費である。
 だから、教育費や住居費の負担が減れば、給料が同じでも、生活に余裕が出てくる。
 本当は、住居費や教育費を下げることが、一番大事なのではないのか。
 日本は、特に住居費と教育費の収入に占める割合が高い。
 特に住居費については、都市計画と絡み、また、地主の既得権益としても問題が多いと思うのである。

 正統の資本主義から見れば、地価は低いほど、家賃が安く、業務の生産性が高いことに繋がり、かつ損益分岐点は低くなるから、当然安いほうがいい。それは国家レベルで考えても同様で、地価が高い国は事業の生産性は低くなり、地価の低い国に競争力で劣り、いつか負けてしまうことは明らかだ。庶民レベルで考えたって、高家賃だけでなく、高地価に起因する生活物価の高さ、公共サービス費の高さで暮らしにくくなるのだから、誰にとっても高地価のメリットなどない。土地を資産にして抱え込んでは、経済がうまくまわるはずがない。
 日本では土地は利用するものではなく、株と全く同じ金融商品、金融資産として考えられ、いつでも土地を処分できるように、なるべく利用せず、利用してもいつでも簡単に建物を壊して売りやすくすることを優先的に考える。だから、本当は社会のために、土地を利用しなければならない都市において、非合理的な土地の使い方がまかりとおってきた。だから、土地は意味なく高いのだ。

 亡国のマンション 平松朝彦著 光文社刊P160〜161より抜粋

亡国マンション The Truth of Defective Condominiums (光文社ペーパーバックス)

亡国マンション The Truth of Defective Condominiums (光文社ペーパーバックス)

 本当の豊かさを得るためには、インフレターゲットや金融緩和策では、どうにもならないのではないか。
 安心して生活できる住居を国民が持ち、すべての国民が知恵ある国民になるために、また、この国に住むすべての人たちが幸せに暮らせるための知恵を持つ人材を生み出すために、多くの国民が十分な教育を受けられるようになって初めて、真の豊かさを実感できる国になれるのではないかと、そう思うのである。
 だから、インフレターゲットや金融緩和策より景気を回復するのでなく、土地の流通化、地価の値下がりを具体的な政策にし、国民が生活しやすい都市環境と収入に対する住居費の割合を下げて国民が豊かな暮らしができるようにしてもらいたいと痛切に願っている。