ドラッカー2

 unizouの友人のKは、公務員である。
 Kから聞く上司の話は、残念ながら、公務員への期待感を失わせることが多い。
 もちろん、Kをはじめ、国民、県民や市民を思って一生懸命仕事をしている人がいるのも事実だが、マイナスの上司に引っ張られて、可もなく不可もなく、良いように操られてしまっているといった感じのようだ。


 例えば、これは、数年前にKから聞いた話。
 Kの上司にSという人がいたそうだが、そのSは、部下を何時間も立たせて、「なんでそうしないの?なんでそんなことやったの?」、くどくどお説教をする人だった。
 説教を受けた後、誰もが「じゃぁ何をすればいいの?」と聞きたくなるくらい、方向性を示さない、何の意味もないただの説教だった。
 部下を自分の机の近くに呼びつけて、延々と、説教を続けるということが、どんなに忙しいときでも、行われていたそうだ。
 そして、あろうことか、部下の中には、「親の顔が見てみたい」、「親はあなたにどんな教育したの?」といった関係ないことまで持ち出されて、説教されていたという。


 ある時、Sの余りにしつこい説教を見るに見かねたKが、「何をやるべきか具体的に指示してあげたほうがいいのではないですか?」と伝えると、「俺の言うことが聞けないのか?なら、すぐにやめろ」と恫喝したという。
 Kも気丈な芯のある人なので、そんなことには動じず、「辞めるときは、あなたに言われなくてもやめます。今は、そのつもりは一切ありません」と答えたという。
 その後、KはSとろくに口を利かず、仕事だけは淡々とこなしていたという。


 その翌年の春、Sは異動し、比較的閑職に追いやられたという。
 その時、Kは、「組織はちゃんと見てくれているんだ」と思ったそうだ。
 ところが、Sはさらに翌年の異動で、所長職で転出したという。
 Kは、この時ホントに落胆して、「仕事の結果でなく、人事は別の何かで決まるんだ。この組織は、ダメだな?」と思ったそうだ。


 さて、ドラッカーは、上司について、次のように考えていたらしい。

 うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。このような素質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきがいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジャーとしても、紳士としても失格である。

 真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。それはまず、人事に関する決定において象徴的に表れる。真摯さは、とってつけるわけにはいかない。すでに身につけていなければならない。ごまかしがきかない。ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。

 
 Sは、到底紳士とは言えず、尊敬もされない。
 しかし、Sが昇進の階段を上っているという事実で、Kもunizouも公務員の組織に疑問を感じている。
 そして、ドラッカーも、きっと、まともな組織ではないと感じるだろうと自信を持っていうことができる。