安部ドクトリンと相続税改正議論

 安部総理大臣が、東南アジア歴訪中に、対ASEAN外交の基本方針、いわゆる「安倍ドクトリン」を発表したというニュースがあった。
 自由、民主主義、資本主義という普遍的価値の拡大や、力でなく法が支配する開かれた海洋をめざしASEAN諸国と協力する事など、5つの原則からなっているそうだ。


 また、与党税制協議会では、相続税増税を検討しているというニュースがあった。
 5000万円の基礎控除を3000万円に、相続人一人当たりの控除額を1000万円から600万円に引き下げるという。合わせて、最高税率も引き上げるという。


 対ASEANに対する外交の基本方針に基本的には賛成だが、我が国の資本主義と税制の関係に常々疑問があったので、ここに記しておきたい。


 何度もブログで記しているが、資本主義の大前提は、公平・公正な状態の中で競争が行われることだ。
 そして、公正・公平な競争社会を築くためには、行政の様々な機関が、しっかりと競争のレフリーをしなければならない。


 与党税制協議会で議論されている税もそうであり、税を所掌する官庁、税務署や県税事務所、そして市町村が、きちんと課税し、徴収しなければ、ある人は応分の負担をし、ある人は負担をせずに、資本主義社会の中で競争することになる。
 100m競争に、30kgの荷物を背負って走る人と、何も背負わずに走る人がいて競争を行っているようなものだ。

 
 公平・公正な資本主義が形成されていないのは、税制がきちんとしたシステムで、公平・公正に執行されていないせいでもあると思う。


 そして、その根本的な原因は、日本の税制が基本的な部分においてたびたび変わること、国民がきちんと簡単な申告・納税できるような教育を受けていないことなどが原因ではないかと思う。
 さらに、国民の納税意識は低い。
 諸外国では、担税力があるのに、租税を払っていない人は社会的地位を失うと聞いている。民主主義が浸透し、国を運営するために国民が支払う会費であると誰もが認識しているが故だと思う。


 今回の相続税制の改正。
 都市部の住宅地に住む人たちは、普通の家に住むことさえできなくなる!?


 政治家は、どんな生活を国民にさせようとしているのか。


 国民の生活のグランドデザインを描かずに相続税制を変えれば、猫の額のような土地に、隣と軒先が重なるほどの敷地目一杯の建物が建っていく。そこには、防災の意識は全くなく、一度関東大震災のような地震が起これば、都市部の住宅地は焼け野原に変わる。そして、多額の復興費用がかかる。
 また、相続税所得税の補完税であり、所得税の課税がすべての人に公平にされて、消費税制があれば、相続税率はそれなりに低くても済むはずである。


 本来、税制で議論すべきは、国民生活のグランドデザインを踏まえた、徴収コストの負担減となるシステムによる課税と徴収の公平性・公正性の確保であると思う。


 安部総理大臣が対ASEAN外交の基本方針として掲げた「自由・民主主義・資本主義」については、是非、国内においても、その基盤となるシステムの構築と浸透により徹底し、確保してもらいたいとunizouは強く願っている。