企業の在り方(2)

 会社が有限責任を享受するためには、会社と個人が公私混同できないような制度が大事で、それは、制度が作られているだけでなく、きちんと守られるよう担保されていなければ、資本主義社会とは言えない。
 その制度が、質実ともにきちんと運用されなければ、保護され続ける人が生まれる。保護されない人は、相当の努力をしなければ、利益を享受できないし、失敗の責任をとらずに平然と市場に残り続ける人のせいで、きちんと経営している人が利益を受けられないことになる。
 公平・公正な競争社会でないことは、国民のやる気を失わせる。
 貧しい人は、スポーツで一流選手になるとか、芸能人で売れるかしないと富を得られないし、あるいは極端になるが、不正で富を得るしかなくなる。
 だから、社会における不平等や格差の根本的な原因は、ほとんどが公正・公平な競争ができない資本主義社会によるとunizouは思う。

 規制緩和も大事だが、制度を資本主義社会にふさわしい運用にすべきなのだ。
 前回紹介した「改正会社法の理論と実務」(酒巻俊雄著、株式会社ぎょうせい)は、イギリスの「計算の公開」の状況について、次のように触れている。

第9章 残された立法課題
 二 計算の公開
 (1)従来の経緯
   P151

 ただ、この登記所を通じての計算書類の公開に対する中小企業の反対は、他の問題に比しても、極めて強いようである。しかし、この制度は、会社が物的有限責任の利益を享受するための基礎的条件として最も重要視されているものである。わが国におけると同様に、多数の中小企業株式会社が存在するイギリスでも、1967年の会社法改正において、計算の公開こそ、より本質的な基礎的条件であるとして、すべての有限責任の会社に計算書類の商業登記所への届出による公開が強制されことになり、今日に至っていることは前述した。

 イギリスでは、1967年と、すでに50年近く前に、制度ができている。
 日本の政治家も、中小企業の言いなりにならずに、きちんとした資本主義社会が持続可能な社会の前提であると肝に銘じて、取り組んでもらいたい。
 事業をやるには、有限責任の株式会社でなければならないということではない。 無限責任の個人事業でやれば、公私混同などなく、成功した時にすべての利益を享受でき、失敗した時には、個人でしっかり責任を取ればいいのだから。