企業の在り方(1)

 unizouは、仕事柄たくさんの決算書を見る機会が多い。
 それらのたくさんの決算書を見て、いつも思うのが、「赤字なのに役員報酬が多額な企業が多いなぁ」ということである。
 噂に聞くところによると、租税などを滞納していても、しっかり高額な役員報酬を支払っている企業まであるという。


 ずいぶん前に商法を勉強した時は、ちょうど1990年(平成2年)の商法改正時だった。
 その当時のテキスト、「改正会社法の理論と実務」(酒巻俊雄著、株式会社ぎょうせい)には、次のようにある。

第1章「商法・有限会社法改正の経緯と改正法の特色」
1 商法等改正の経緯
(2)改正試案・要綱案の基本的立場
  一 有限責任制の基礎的条件の整備
 区分立法の主眼の第二は、株式会社と有限会社という、社員の有限責任制を原則とする物的会社形態の利用に合理的な制限を設け、また、その利用に伴う責任のあり方を明確にしようというものである。もともと有限責任は最終的に会社債権者に迷惑をかけることを前提とした制度であるから、有限責任の利益を享受するための基礎的条件を法制上整備しておくことが必要である。従来のわが国では、この種の制度を欠いていたので、小規模会社の債権者は、会社が破たんした場合には自ら取締役の個人責任(商266条の3)を追及する以外に救済される途がなかったといえる。しかし、それはあくまでも個人の努力にまつものであり、そのような弊害を最小限にとどめ防止するためには、やはり一般的な制度的な保障が確立されなければならない。
 そこで、改正試案は、最低資本金制度、登記所での計算の公開及び外部の会計専門家による会計監査または会計調査という三つの制度を予定し、計算の公開をしないか会計監査・会計調査を怠るなど基礎的条件の一部でも欠く場合には、取締役の責任を強化することにしていた。
 このうち、最低資本金は、会社濫設の防止と最低限の責任財産の確保という設立段階での制約として、これらの会社の利用を制限するという規模の基準の一つといえる。既存会社に適用するときは、淘汰基準として機能する。
 しかし、企業がいったんこの関門を通過すると、あとは法定資本としての機能しかもたず、会社倒産時など最終的に会社債権者の保護が求められる段階では、その機能すら果たしえないことも少なくない。これに対し、計算の公開は、会社の資産状態・収益力の正確な開示を要求することで会社債権者の自己責任を求めるものであるが、会社債権者の保護に果たす役割からは、この方法の方がより本質的な解決と考えられる。会計監査・会計調査は公開されるべき計算書類の正確性を担保するものである。

 そして、2006年(平成18年)5月に会社法が施行された。
 資本金の最低金額に制限はなくなり、「計算の公開」については、公告の義務、時期及び方法が商法283条に、罰則規定が商法498条にあったが、IT時代に即した内容に変わり、会社法では、公告の義務、時期及び方法が会社法440条、罰則規定が976条、会社や役員に対する損害賠償責任が民法第709条、会社法第350条、第429条に規定された。


 最低資本金制度はなくなり、設立時における債権者保護の機能はなくなった。
 「計算の公開」について言えば、罰則規定があるものの、実際は罰則を適用されることがないため、中小企業において計算書類が公告されることは少ない。

 資本主義社会の根幹は、公平・公正な競争社会である。
 お手盛り役員報酬、オーナーの公私混同(一人会社も会社法になって認められた)による経営、そんな企業を保護する必要がどこにあるのか?
 日本再生の鍵は、失敗した企業や事業者が、きちんと責任を取った上で、再度、競争のフィールドに戻れる社会であることだと、常々思っているのだが・・・。
 unizouは、「計算の公開」をしていない企業に対し、罰則規定をきちんと適用していくことが、大事なのだと思う。
 そして、会社債権者は、自己責任でその会社と取引を行うことになる。(続く)