生き残っている強み

 先日ある食品会社の30代後半の若い社長と話をした。
 その若い社長は、10数年前に先代の社長(父親)から事業承継したのであるが、実際は先代の社長がほかの役員やスポンサーから見切りをつけられ、その子である現在の若い社長に会社経営が引き継がれたものであるという。
 先代の社長は、自分の関連会社に資金融資をして失敗するなど、会社を私物化していたところがあり、みんなから不信を買ったというのだ。
 現在の若社長のもとの会社は、先代の社長が辞めた際の負債を多額に抱え、それを何とか支払いつつ、若干なりとも業況を上向きにして今日に至り、ここ数年の決算では黒字が続いているという。
 しかし、それでも、負債は減らず、その金利負担などのせいで、思い切った設備投資もできずに、困り果てているところがあったようだ。
 unizouは、次のようなことを聞いてみた。
 「この地域に、同業の企業ってどれくらいあるの?」
 「以前は、数社ありましたが、今は2社です。そして、圧倒的にうちの方が、規模が大きいです」
 「そうなの。じゃ、会社がつぶれたりすれば、地域に与える影響が大きいよね」
 「ええ、パートだけでも100人くらいいますから」
 「それなら、一企業の視点だけでなく、地域企業としてバックアップしてもらえるか、自治体に相談してみたらどう?それに、過去の負債が負担でも、今、決算状況が良くて、もう同業者が2社だけなら、もう既に生き残っている強みがあるということだから、その強みを前面に出してみたら」
 「そうですね。生き残っている強みはありますよね」
 「そう。中小企業再生支援協議会に相談に行ってみるのも手かもしれないね。『事業再生に意欲を持った皆様を支援します』ってあるし、『事業は円滑に行なわれているが、過去の投資等による借入金の返済負担等で、資金繰りが悪化している場合』や『事業存続の見通しはあるものの、事業の見直しや金融機関との調整が必要となっている場合』など、あなたのところにぴったり当てはまるじゃない」
 「そうですね。今まで、自分たちのできることしか頭に浮かんでこなくて、それまでやってもダメで、しんどい経営を続けていたんですよ。今生き残っていることを強みとも考えていませんでしたし・・・」
 それから、どうしたかはまだ聞いていない。
 ただ、会社経営がうまく行かなくなった企業は、悪い手段や結果が悪くなるような選択を選ぶような気がする。政府では、各種の制度融資や助成制度を用意しているにもかかわらず、それを使うこともないし、知ることもない。
 あり地獄に落ちたありのように、もがいてもがいて、底に沈んでいく。
 この若い社長を見ていると、先を見て、国の施策を頼りにすることも、賢い選択なのだと思えるのだが・・・。