DES

 先日ある運送会社を経営している友人の若い社長が、unizouに決算書見てもらって相談したいと言ってきた。
 仕事上いくつもの決算書に目を通しているので、中小企業診断士の資格はなくても多少のアドバイスはできるだろうと相談に乗ることにした。
そして、決算書を目にしてびっくりしたのが、実は前期から比べて資本金が5000万円も増資されていたこと。
 「これ、どうしたの?」
 「えっ、実は金融機関から借入れせずにずっとやってきたのですが、父親からは借入れをしていたのです。でも、それも限界にきたので地元金融機関に相談に行ったら、『自己資本比率が低いので借入金を資本金に振り替えて自己資本比率を上げて、健全な経営体質にしたほうがいいですよ。そしたら、融資できるかもしれません。』と言われて、それで父親にはいろいろ言われたのですが説得してそうしたのです」という。
 「本当にそういうことを言う金融機関があるんだ」と思いながら、後で資格の学校のテキスト「中小企業経営・政策」の(事業の存続・倒産と再生)を見返し、ホームページを調べてみた。

 DESとは、Debt Equity Swap(デットエクイティスワップ)を略したものであり、財務改善の手法の一つで、負債と資本との交換のことである。貸し手の立場からは、債権を元手にした出資を意味する。具体的には、例えばある会社の社長が自社に対して3000万円を貸し付けていたとすると、DESでは会社がこの3000万円を社長に返す。しかし実際には会社には返すお金がないので、社長は返してもらった(ことになっている)3000万円を会社に増資する。この操作により、実際のお金は一切動いていないが、会社としては返済義務のある借金が減り、返済の必要のない資本が増えることになる。バランスシート上も、自己資本比率が改善する。この手法は企業規模に関わらず広く用いられており、例えば産業再生機構などの再生案件でも頻繁に見られ、銀行が債権を放棄する代わりに、DESをおこなうなどしている。しかしながら、安易なDESを抑制するため、2006年5月から施行された新会社法では、債権の「時価」(資産の価額)に応じたDESしか認めないこととされているため注意が必要である。
 貸手側のメリットとしては、銀行が貸した先の会社が債務超過などになった場合、銀行のおこなう救済策として、以前は「債権放棄」が一般的であった。しかしながら銀行にとっては、債権放棄をするということは、その分銀行の資産が減ることになる。その点DESであれば、貸したお金がなくなる代わりに相手の会社の株式が手に入るため、銀行の資産が減ることはなく、債権放棄よりも抵抗感が少ない。その会社がきちんと再建して上場でもすることになれば、大きな差益も期待できる。(ただ実際には株価が低下するという問題があるため、銀行が当該株式を売却して利益を得ることは稀であると思われる)
 一方の借り手側のメリットとしては、借金の返済を免除してもらえることである。しかし、「現物」出資された債権の額面と債務の評価額(時価)との差額が「債務消滅益」となり一定の条件以外は課税の対象となる。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

 確かに、自己資本比率は高くなった。これで、財務上は健全な状況になったと言える。しかし、実際は「本業でどれだけ利益を出せるか」ということ。経営はボランティアではない。赤字で経営を続けていてはいけないのだ。
 そのことをしっかり伝え、経費を削減し、売上を伸ばし、そしてしっかりした資金調達を行なうように伝えたが、所詮中小企業診断士もどきなので、最後に「きちんとした中小企業診断士にアドバイスをもらうように話しておいた。