中小企業診断士からみた公租公課と私債権2

 2007-11-11のブログに、公租公課と私債権について書いたところ、K.Tさんからコメントをいただいた。
 ブログでは、『税金や社会保険料などの公租公課の支払いと金融機関などからの借入金の返済は、みんな同列に考えている』という中小企業診断士がいることを紹介した。
 unizouが舌足らずな言い方をしたかもしれないので、もう少し付け加えて説明しようと思う。
 この中小企業診断士は、クライアントである中小企業の再生に関わっているのだが、その中小企業は、金融機関からの多額の借入れのほかに、1億円近い公租公課を滞納していた。
 そして、この中小企業診断士は、再生に当たって、滞納している公租公課も金融機関からの借入れも同列に考えて、公租公課の支払い期間と金融機関への返済期間を同じにしていたという。
 unizouは、公租公課を滞納していなくても、「公租公課を同列に考える」ということは納得いかないが、ましてや滞納している場合はなおさら納得いかないことだと思っている。
 公租公課は、誰にとっても中立で公平でなければいけないというのが、租税負担の原則である。だから、そういった義務を果たさずに市場に出て競争するというのは、他の企業にとって非常に迷惑な話である。
 例えば、隣同士に同じ業種のA企業とB企業があるとする。A企業は公租公課1000万円をしっかり納付している。一方のB企業は、公租公課1000万円を払わずにいる。最終的には、B企業も公租公課を支払わなければならないが、B企業は、手元にある1000万円をサービスや商品の単価引き下げに使う。
 客は単価引き下げをしたB企業を選択する。A企業は苦戦し、やがて撤退せざるを得なくなる。B企業は生き残り、延滞していた公租公課を払い、悠々としている。
 真面目に公租公課を払っていながら撤退せざるを得ないA企業は、どう思うのだろうか?
 今のような時代、経営が非常に楽な企業は少ない。どの企業も、必死になって生きているというのが実情である。そんな企業の多くが公租公課の支払い義務を果たし、それ以外の様々な規制もきちんとこなし経営活動をしているというのが実態である。それを、スタートラインを自分だけ前にして走り始めていいはずがない。そうなれば、経済秩序などあったものではないのだ。
 だから、「こういう企業は、市場から退場してもらうべき」というように言いたかった。
 もし、やむなく運転資金が足りなくなった場合でも、公租公課を滞納していいはずがない。運転資金が足りなくて金融機関から借りることになれば、いずれその負債が多額になり、返済を迫られれば倒産となることだってありうる。公租公課を滞納して、金融機関からの借入れを起こしていない場合で行政機関が差押えなどの処分をした場合でも倒産ということになりうる。「誰が引き金を引いたのか」の違いだけで、運転資金を用意できず、経営の仕方が悪かったのはそういった企業なのに、金融機関や行政が悪く言われるのは本末転倒なのだ。
 K.Tさんのコメントに、「企業の生死には勤めている従業員の人生、生活がかかっています。そんな事を考えると、unizouさんの基本スタンスは理解できても、あなたが診断士になったとしたら、とてもドライで、経営者から信頼してもらえないのではないかと心配です。」とあったが、クライアント企業が競争のルールを破ってまで、市場に生き残る道は選択できないというのは、中小企業診断士として当然の基本スタンスだと思っている。
 また、「ドライ」であることと「経営者から信頼してもらえないのではないか」というのは、全く関係ないことだと思っている。ただし、中小企業診断士になっていないunizouがいうのは、本当におこがましいと反省しているが・・・。