不幸の連鎖

 不思議なことというか、こんなことってあるのかなと思うことが、世の中には実際にある。運命を信じるとか信じないとか言う前に、そんなことが起きるの?といった感じである。
 しばらく前の話である。ある下請け会社が倒産した。親会社が倒産した連鎖倒産だった。社長は、親会社が倒産したすぐ後に、親会社から1億円近い売掛金を無理やり回収した。1億円といっても、それは実際には売掛金の半分以下だった。そのため、会社のその月の支払いに多額に不足した。しかし、以前からの多額の負債もあって融資を受けることもできず倒産するしかなかった。そこで、社長は、その1億円を隠すことにした。
 隠すというのは、1億円は闇金に返したという話にしたのだ。そして、社長と社長の妻は破産を申し立てた。
 ところが、その1億円を目にしていた会社の債権者は、破産異議を申し立てた。
 社長の妻は、破産が認められたが、社長は、破産異議に対し適切な弁明がされずに、破産を取り下げることになった。
 それから、しばらくして、社長は今まで住んでいる場所から、ふるさとの地へ帰った。
 ふるさとでは、20歳になった息子が、約3000万円の1戸建ての家を建てていた。さらに、息子はクラブを開店した。
 誰が考えても、20歳になった息子が3000万円の家を建て、クラブを開店できるはずがないと考え、その資金が隠した1億円から出ていると容易に想像することができた。
 社長は、「これで、すべてが終わって、新しい人生を始められる」と考えていたかもしれない。
 しかし、その後すぐ社長には思いもかけないことが起った。
 息子が交通死亡事故を起こしたのだ。それも、飲酒運転で・・・。
 すると社長は、息子名義の建てたばかりの家と土地を手放した。
 せっかく隠したお金を事故の賠償で持っていかれるのを嫌がったのか、それとも賠償の費用にしようとしたのかはわからない。その後のことも詳しく知らない。
 社長に、そして家族に、何が起ったのか。
 unizouは、不幸の連鎖とか因果応報と、簡単に片付けるべき話でないと思っている。
 きっと、倒産した時点で、社長はその事実をありのまま受け入れて、正々堂々と生きるべきだったのだ。
 倒産にしたって、社長の会社がすべての責任を負うといったものでもなかった。
 だから、誠意を持って対処すれば、後ろ向きに、それも日陰に生きる必要もなかったのだ。
 お金がなくても、細々と生きていくことはできる。
 そして、何より若干二十歳を過ぎた息子を、巻き込むこともなかったのではないかと・・・。
 これは、unizouの処世術というか、頭の中の奥底でいつも戒めていることなのだが、「思いもかけない事態に陥ったら、悪あがきをしないでありのままを受け入れて誠実に対応しよう」ということ。
 不思議なことに、悪あがきをすればするほど、蟻地獄にはまったように深みに入り、もう自分で自分を助けることも当然できなければ、誰かが助けてくれることもできないことが実際に起るのだ。
 運命といっても、自分の身の処し方次第なのだ。ただ、それも、運命といえば運命だが・・・。