事業承継

 2007-09-29のブログに「長期貸付金」と題して、会社からの借入金が1億円にもなる会長と社長の“会社の私物化”について書いた。
 この会社の社長は、銀行を8年ほど勤めたのち、現在の会長(父親)の後を引き継いで社長になった。
 しかし、その会長はワンマンで、会長になっても会社の経営に口を出してくるといった人。
 一方従業員は、社長よりも古くからその会社に勤めているので、若輩の社長は「リーダーシップを発揮することができるような状況ではない」といった有様だった。
 だから、「きっと社長は笑顔の素敵な人だろうな」と思って見ていたのだが、どこか納得いかないような、つまらなそうな顔をして仕事をしているような気がして仕方なかった。端的に言えば「生気がない」といった感じである。
 そういった意味では、社長は会長の犠牲になって社長業をしていると言った感じだった。
 あるときunizouは、余計なお節介と知りながら、次のような話しをした。
 「社長さんが事業を引き継いだのだから、社長さんの色に染めるようにリーダーシップを発揮したらいいですよ!」と・・・。
 そうすると社長は力なく「そうしたいのですが、・・・」と、浮かない返事をした。
 2005年版の中小企業白書第2章には、中小企業の人材を巡る諸課題として、後継者に関する課題が取り上げられている。
 「親の事業の承継について」には、「承継者は気まっておらず、自分は承継するつもりはない」という答えが、男女で49.5%、(男45.8%、女52.4%)という結果になっている。
 では、「なぜ承継しないのか」という理由を上げれば、「親の事業に将来性・魅力がないから」が45.8%、「自分には経営していく能力がない・資質がないから」が36.0%となっている。一方で「今の収入を維持できない」という理由は13.9%と低い結果となっていることから、収入というよりもそもそも事業の継続に不安があること、やりたいと思える事業でないこと、そして経営していくことに対する不安が、子供が承継をしない理由となっているという。
 世の中のニーズがこれだけ多様化し、現在ではそれぞれの嗜好が千差万別な時代にあっては、社長の子だから親の後を継ぐなんてことは、本当はありえない話なのだと思う。
 それを無理やりやらせてしまえば、生気がないような顔をして社長業をしなければならないということだろう。
 そして、社長となった子は、自分の生き方を見失ってしまう。
 やりたいと本心から思ってやっていないと、いろんな歪を生んでしまうのだ。
 この会社で言えば、社長の立場と従業員の立場に微妙な影を落としてしまって、きっと羅針盤のない船のように彷徨い始めているということだと思う。
 会社は個人の所有物ではない。様々なステークホルダーに関わっている公的なものである。
 それを決して忘れることなく、それぞれが心して関われば、それぞれにとっても決して不幸な状況にはならず、会社も社会にとって必要な物になって未来永劫引き継がれていくのだと思っている。