経営責任の取り方と貸し手責任

 昨日のブログで、その負債の多くが公租公課を占め、一般債権は負債の一部に過ぎない会社が第二会社を設立して、公租公課の支払いを逃れるという話を書いた。
 今日は、その友人から聞いた別の会社の話。
 その会社も第二会社を作った会社同様に多額の負債を抱えていたという。
 ただ違うのは、社長が老舗企業の2代目という立場にありながら、先代がバブル期に作った社屋建設資金の融資返済、公租公課などの負担をしながら会社再建へ向けて努力している真面目な人だったこと。
 その結果、ここ数年は当期純利益を計上できるまでになったが、さすがに過去の負債が大きく、思うように債務処理が進んでいなかったという。
 借入先の金融機関からは、ただただ返済を迫られ、公租公課は14.6%もの延滞税を払わなければいけないために、全体で本税の何倍もの金額を払わなければいけない状況となり、追い討ちをかけられるような状況だったという。
 そんな状況下で、ある行政の担当者が、「中小企業再生支援協議会へ相談してみてはどうか」と話したそうである。
 その担当者が言うのはこんな話だったそうである。
 「公租公課は、相手を選べないですよね。決まったとおりに払ってもらうしかない。でも、民間同士の貸し借りは、借りた人の責任だけではないですよね。あなたのように事業をやっている人は、必ず多かれ少なかれ貸倒れになるリスクを抱えているはずですよ。金融機関だって、同じように10人に1人とは言わないまでも、10000人に1人とかで貸倒れリスクを抱えているはずですよ。そういったことは、金融機関だけではないですよね。一般の取引だってそうなんですよ。そういった気持を持たないで、安易に貸し出しをしたり、取引をしたりして、自分が債権を回収できないだけでなく、相手をも泥沼に落としていく。本当は3000万円の負債で撤退すべきところを、1億円の負債で撤退することになる。だから、誰かにお金を貸すときも非常に大きな責任があるし、取引をすることも同じだと思うんです。あなたのように真面目に取り組んでいる人なら、公租公課を優先に考えて、債務処理を進めることが再生の近道ではないかと思いますよ」と・・・。
 真面目な社長は不安に思ったものの、早速県内の中小企業再生支援協議会へ相談に行ったそうである。
 そこでの対応は、スピーディーで真摯で、不安に思っていた社長にやる気と数年でどうにかなるという気持を持たせたそうである。
 unizouは、こう思っている。一生懸命やってもうまくいかないことのほうが多い。商売だって、水物。失敗したり、挫折したりすることなど日常茶飯事にありうる事だと思う。そのときに、勇気を持って撤退したり、勇気を持って相談したりすることで、活路が見出せることは大いにあると・・・。
 そして、何より、事業に失敗しても「命までとっていかれることなどない」ということ。きちんとした処理をすれば、再チャレンジだってありなのだ。
 それにしても、金融機関の無策には、ほとほと困った物だ。「ただ返せ」と言うなら、こどもでもできるはずだ。一緒に考え、「撤退すべき」ならしっかりそのことを伝え、少し融資返済額を負けて、儲かるようにさせてから後で回収するなら一緒に取り組めばいい。これは、金融機関だけでなく、会社の取引先などが本気で人間を相手にした取引をしていないことから始まっていると思っている。
 生真面目な社長が、債権者である金融機関に「中小企業再生支援協議会へ相談に行った」と伝えると、その担当者は苦虫を噛み潰したような顔をしたそうである。