中小企業の資金調達4
数年前の長野支店に勤めていた当時のこと。
長野オリンピックを終え、どの業種も一時の好景気ら急速に底冷えした状況になってしまった。
特に建設、観光業(宿泊)などは、本当に惨憺たる状況であった。
その当時、ある観光地のペンションオーナーに出会った。
そして、金融機関からの資金調達について、話を聞かされた。
そのペンションオーナーは、長野オリンピックを控えた平成4年頃、ある金融機関からペンションの新築を持ちかけられ、数億円の融資を受けた。
もともと家内企業的な有限会社だったが、建物はペンションからプチホテルへと変貌し、オリンピックまでは売り上げも年間3億円程度だったという。
しかし、オリンピックを終え、観光客は日本全体の経済の低迷も相俟って大幅に減少し、売上は1億円前後に落ち込んでしまったという。
ニッチもサッチもいかない状況となり、まず始めに、国税・地方税などの税金を滞納し、そして、ついには金融機関への返済も滞ってしまった。
それから、4・5年経ち、unizouと出会った当時には、税金の滞納も金融機関への返済も泥沼の状況となっていた。
金融機関は、融資当時の「さあどうぞ貸しますよ!」といった態度を一変し、大雪で壊れた屋根の補修の際に出た保険でさえも、「融資の返済に充てて!」と言われたという。
そして、一生懸命に資金調達について考えたが、一向に解決策を見出せないままだった。
金融機関は自分たちの融資の回収のことしか考えず、「ただ、ただ早く返済してください」というような計画を立てていて、その計画では経費も税金も払えない状況だったという。
挙句には、奨学金を受けていた子どものことも、「貧乏人は学校へいってはいけない」というようなことさえも言ったという。
そして、一番ひどいと思う話しは、「あなたのところは、融資先のランクでは破綻先となっている。マニュアルどおりつぶしたほうが手っ取り早いが、しばらく生かして融資を回収したほうがいいというので今のまま競売もせずにいる」と平気で言われたという。
金融機関の経営も、そのほかの業種の経営も、リスクを負っている。
相手先が倒産したり、売掛金が回収できなかったりするのは、中小企業なら日常茶飯事だ。
一方の金融機関だって同様のはずである。
借り手に責任がないとは言わない。しかし、貸し借りは、必ず貸し手にも責任はある。
ただ、融資の回収のみを優先し、取引関係に至った状況さえもなかったような一方的な態度に違和感を覚えてしまう。
こんな話を聞いて、その会社の本質や事業内容を聞いて、融資をし、最後までしっかり会社の行く末を看取るような金融機関はないものかと、その当時考えたことを覚えている。
そのペンションは、スキー客を当てこんだものだったので、春・夏・秋はオフシーズンなのだが、紅葉が見られる頃、お客が増え始める。
紅葉前線のことをテレビで言い出した最近、ふとそんな当時のことを思い出して、中小企業の資金調達と金融機関のあり方について、ふと考えてしまった。