HERO

 この夏、休暇中に偶然テレビで見てはまってしまった再放送テレビドラマ「HERO」。
 数年ぶりに映画化されるということで、再放送していたらしい。
 その何話目かを偶然テレビをつけてみて釘付けになり、当然、全部を見切れないので、DVDレンタル店で借りてきて見るほど、はまってしまったのだ。
 何がいいかというと、一つの事件にどっぷりはまるところが格好いいのだ。
 真実を求めるため、何度も調書を読み直し、現場に行き、加害者や被害者の心に入っていく。
 事件に大きいや小さいもない。当然、出世のためにやるわけでもない。
 このドラマを見ていて、以前紹介した金井壽宏さんと高橋俊介さんの共著「部下を動かす人事戦略」(PHP新書刊)に出てくる2つのタイプに分かれる若者の一方の典型を見たような気がした。
 著書では、2つのタイプが次のように書かれている。

 ひとつはピラミッド組織や年功序列のような、明らかに若手が不利益を被る現体制に対し不満をもっているタイプ。自分は実力があるのに、いつも下積みのようなしごとばかりやらされ、ちっともチャンスがまわってこない。給料も安い。それなのに、この会社には年齢が上というだけで、たいした仕事もしていないのに高給をもらっている人が何人もいる。こんな組織じゃやる気も出ないと、つねに不満を抱えながら働いている層だ。
 つまり彼らはもともと、上昇志向の持ち主なのである。もっと出世したい、給料もあげたいと希望しているのに、年功序列をベースにした組織だと、若いうちはなかなかそのあたりが思うようにいかない。これが高度成長のころだったら、まだ出世や昇給の速度も早かっただろうが、今はどの会社も以前のように拡大路線をとることが難しく、組織の上が詰まっている状態なので、どうしてもこの層は不満を募らせることになってしまう。
 もうひとつは、出世や昇給より、自分らしいユニークなキャリアをつくるほうが大事だと考えるタイプ。この一群を、慶應義塾大学のキャリアラボが実施した分析ではクラスターBと呼んでいて、彼らの特徴は出世や昇給より、やりたいことや自分らしいキャリアをつくることのほうに関心が高く、その希望がかなえられればたちまちやる気になって、希薄な能力を発揮するという点だ。

 HEROに出てくる久利生公平は、まさに後者のタイプ。
 unizouも会社に入ってかなりの年数を経過したが、最近考えるのがこれからのこと。
 部下を持つようになり、これから、徐々に現場から離れていく可能性が大きくなっている。
 実は久利生公平のように一つ一つの仕事を大事にして、お客と向き合っていられるのも魅力的な生き方だと思っているのだ。
 このことについて、「部下を動かす人事戦略」では、「生涯一営業パーソンを選ぶ人だっている」ということで次のように書いている。

 エドワード・ジョーンズをはじめ、アメリカでこの十年ほどの間に急速に伸びてきたリテールの証券会社であっても、営業パーソンは基本的に転勤させない方針をとっている。
 そうすると営業パーソンは、ひとつの地域で同じ顧客と長くつきあうことになる。口八丁で適当なことをいって売り逃げる従来のやり方では、すぐに顧客がいなくなってしまうから、必然的に顧客の満足を考えて営業しなければならなくなる。また、会社のほうも、なにがなんでもノルマを達成するというタイプより、顧客から信頼され、安心して資産運用を任せてもらえるような営業パーソンを重視するようになってきているのである。
 さらに、転勤がないだけでなく、本人が望むなら一生その地域の営業パーソンでいることも可能であり、それを評価するシステムを会社がきちんと用意している点も注目される。だから、営業が好き、それもひとりの顧客と時間をかけてじっくり人間関係を築いていくような営業パーソンも、安心し、なおかつ誇りを持って働けるのである。

 映画「HERO」や著書で言っていることは、会社で一番上のトップだけではなく、それぞれの人がHEROに成れるということを伝えているのだと思う。
 実はunziou、今上映中の映画「HERO」も試験勉強の息抜きにはさっさと見てしまった。
 本当に面白いだけでなく、どんなふうに仕事と向き合えばいいのかを教えてくれる、貴重なエンターテイメントだと思うので、皆さんも是非見てもらいたいと思っている。