中小企業診断士を考える

 最近、いろんな方からブログに対するコメントをいただき、改めて中小企業診断士の業務について考えさせていただくきっかけになった。
 税理士や公認会計士などの士業のほとんどは、それぞれ個人や企業といったクライアントからの依頼に対する業務が主である。
 もちろん、中小企業診断士もそういった面がないということではないが、今まで聞いてきたことや見てきたことを自分なりに分析すると、他の士業と違ってそれが主な業務にならないのではないかと気がしてきたのである。
 つまり、もっと大きな行政的な仕事を含んでいるのではないかと・・・。
 特に、中心市街地活性化の各種施策に関わるといった場面では、そのことが顕著なのではないかと思っている。
 また、1個人や1企業といったことでなく、業種全体をサポートするようなケースもあると聞く。
 個店に対する診断・助言もやりたいが、こういったことこそunizouがやりたいと思っていたことなのである。
 unizouは、旧街道の宿場町で生まれて育った。
 今、住んでいる地も同じ旧街道沿いの宿場町であり、JRの路線はあるものの、街道のある東口の駅前は 古くからの宿場町の町並みを止めるわけでもなく、かといって町並みが整備され、にぎわいのある中心街となっているわけでもない。
 もう何十年も、中途半端なかたちで少しずつ変貌しているといった感じであった。
 西口駅前はといえば、何もなかったせいで整備はされたものの、それが市民の足を止めるような賑わいのある街に変貌しているかといえば、決してそうではない中途半端なものとなっている。
 こういった商店街の活性化の困難な状況を、独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ−NET21の「中小企業診断士の広場」、レポート中小企業診断士の仕事では、「広尾商店街支援レポート―まちの「豊かさ」再生への挑戦」と題してレポートしている。
 【第2回】「行政、支援機関、診断士チームの連携」から一部を抜粋すると・・・

 中小企業診断士が、地域や商店街を支援対象とする場合の、企業をクライアントにする場合と比べた一種の困難もあげておきたいと思います。時間がかかる、コストがかかる、成果の評価がしにくい、の3点です。
 企業は営利追求の組織体ですが、地域社会は生活の共同体で、営利要素は基本的にありません。商店街はどうかというと、商店は営利を追求しますが、同時に地元に根ざした生活者であり、商店街組織は福祉重視の“ゆるい”仲間組織でもあります。営利のための行動水準は、企業体と比べて一定程度低位です。 マーケティングやマネジメント水準も決して高いとはいえません。
 コンサルタントとの二人三脚は一直線にいけば素晴らしいですが、そうやすやすとはいきません。地場で長い商売をする商店街に落下傘のごとく降り立つ中小企業診断士は、商店主たちと互いの脚を結び合うだけでも時間がかかります。
 相手の商店主はというと、浮かぬ顔ですが動きません。どう動いたらよいかわからない、というのが実態でしょう。この背景には、困る前に時の政治・行政が助けてきた歴史があります。「中心市街地等、商店街の衰退あるいは空洞化の原因の一つは、政策が無かったからではなく、逆にありすぎたからだ」と、中小企業支援に長く携わった兵庫県立大学中沢孝夫教授は指摘しています。長い依存が「いざ逆境」に用いるべき頭・足腰を弱めたとも。
 公的支援パラダイムが自助努力へと変わった今、お手伝はこの「人頼み」の遺伝子解除からはじまります。しかし、「遺伝子解除なんて余計なお世話」が商店主の基本的態度です。それをなぜ必要か、どのようにできるか一緒に考えることから支援はスタートします。これは急いでできることではありません。
 実はコンサルタントが最初にできることはほんの少しだと考えています。それは知とスキルを紹介して元気を煽ること。商店街弱体化の原因には、ハード重視で主体の力=ソフトを軽視した歴史がありました。そして今、時代は「目の前にパン」より、「パンの焼き方」を身につけることを求めています。自ら マーケティングやマネジメントのソフトを手にし、やる気を自覚した商店街になっていただくことが大事です。商店街の自律的で主体的な活動が、生産性を高め、社会的コストの低減につながります。

 unizouは、一個人や一企業の利益追求のお手伝いをすることも大事な仕事だと思っている。しかし、こういった商店街の活性化をすることによって、多くの市民が住んでいる街に誇りを持ち、癒されるような街になるとしたら、それもすばらしい中小企業診断士の仕事ではないかと・・・。
 そのためには、幅広い知識と、それを活用するための知恵と、自らが汗をかき、協力を得られるような人望(徳)がないと、きっとやっていけないハードな仕事が、中小企業診断士の仕事そのもののような気がしている。