総裁選で考えるシャッター通り

 完全に趨勢が決まっている総裁選。
 福田氏が選挙演説に訪れた福島県で、シャッター通りを目にして「どうにかしないといけませんね」と言っている場面が放送された。
 一体どうしようというのだろうか?
 シャッター通りは、構造改革負の遺産とはいえない。
 もう、構造改革以前に始まっていたことだ。
 その理由をいくつか挙げると・・・

  • 事業承継者がいないこと
  • 物件を所有している人が、職住近接で職はやめても、住まいとしているケースがあること
  • 個店ごとそれぞれが勝手なことをしていて、タウン(商店街)としての活性化を図ることが難しいこと
  • 所有権の権利関係が複雑になっているケースが多いこと
  • 個店ごとに権利を主張して、それらを取りまとめるのが非常に難しいこと

 それらの理由が複雑に絡み合って、商店街を活性化させるのは非常に困難なことだ。
 中小企業診断士として個店の診断、助言をすることも、中小企業診断士になれたらやりたいことではあるが、こういった商店街の活性化といった複雑な問題にたった一つの町の商店街でも関わることができたら、それは中小診断士冥利に尽きると思っている。
 それを、簡単にコメントした総裁候補の福田康夫さんに、がっかりしたのである。
 商店街の活性化に向けた行政などのリーダーシップも非常に重要なことではあるが、個店がそれぞれが経営努力し、そして個店が自らのことばかり主張するのでなく、タウン(商店街)としての活性化を図るため一体となって推進していく姿勢でいることが、何より大事なのだ。
 unizouが診断士の資格を取ろうとしたのが2004年で、最初に手にした中小企業白書は2005年版だった。その中小企業白書には、海外の中心市街地活性化への取組が取り上げられていた。
 その中の事例2-2-16ベルギー・ハッセルト市の「商店街の空き店舗対策に有効な荒れ地、景観対策課税制度」や2-3-17イギリス・ヒッチンの「日本と同じ課題を抱える小都市での、商店街再生に向けた取り組みを成功させたタウンマネージャーの役割など」の事例を見ると、商店街の活性化を図ることは、一部の人たちにとっては大きな痛みを伴うものであることがわかる。(イギリスのおけるタウン再生の具体的方策は、商店街の商店主だけでなく、ペデストリアナイゼーション、カーパーキングやパーク&ライドなど、いずれも住民や利害関係者にとっても痛みを伴うもので、その理解と調整が必要なものである)
 国会議員や地方議員に、そういったことを行うための強いリーダーシップを取ることができるのだろうか? 甘い言葉ばかり言って、痛みの伴うことも、「将来のためだ」と伝えることができるのだろうか?
 また、中心市街地を活性化するために取り組まなければいけない問題に費やさなければいけない時間は非常に多い。そういったことができるのだろうか。
 地域格差中心市街地の活性化も、経済の問題だけでなく、人間の心の問題に関わってくる問題である。
 大きなビジョンを持ち、どういった国にしようという思いがなければ、国民のその場だけの要求に屈して、悪い方向へ向かうケースだってないとは言えない。
 政治家にばかり頼っていけない時代である。そういったことに関われるときがいずれくることを期待して、日々精進をしていこうと思う。

事例2-3-16 商店街の空き店舗対策に有効な荒れ地、景観対策課税制度:ベルギー・ハッセルト市

 ベルギーでは地域政府レベルの政令により、空き地、空き家の放棄防止を目的とした課税制度が施行されている。
 フランダース地域のハッセルト市では、1982年より景観対策の観点から美観を損なうような建物を放置させたままで修繕、改装など何も措置をしない所有者に対する解決策として制度を創設した。
 課税対象は景観上荒れている建物及び空いている建物、土地であって、具体的な適用は郊外の住宅、工場等が多かった。こうした措置により、1982年に450棟が課税対象となったが、2004年時点では20棟になっている。空き店舗のまま放置するよりは賃料を下げてもテナントを入居させようということで、都心部の空き店舗解消にも効果が出た。

[ハッセルト市の空き家および放置された建物および住宅に関する直接税(景観課税)]
 (2002年1月1日から2006年12月31日まで適用)
<課税対象基準>
・関係当局によって、住宅に適さないと宣告された住宅
・関係当局の解体指令が出されている住宅および建物
・人の住んでいない住宅
・会計年度の期間中に建物の50%が有効に利用されていない建物
・市長治安官団体により権限の付与された、官吏によって作成された、放置に関する技術報告書を伴う住宅
・災害、老朽化もしくはその他に見舞われた、建物の残骸を伴う用地
・目的に沿った使用をされず、未完成のままになっている、新しく建てられた建造物
・もはや使用されていない、商業用および工業用建物
<基礎税額>
公道と境を接している建物もしくは住宅の正面部分の長さ1m毎に75ユーロ=公道と境を接していない建物、住宅orその一部:建築面積1m2毎5ユーロ
<課税対象者など>
その会計年度の1月1日時点での、完全な所有者、建物保有者、長期借地人もしくは用益権者であって初年度は基本額、2年目から基本額の2倍、3年目3倍、4年目4倍、5年目5倍を課税する。

事例2-3-17 日本と同じ課題を抱える小都市での、商店街再生に向けた取り組みを成功させたタウンセンターマネジャーの役割など:イギリス・ヒッチン

 小都市でのTCM(タウンセンターマネジメント)などによる商業集積のテナントミックスの再構築などにより、郊外大型商業施設の立地により衰退した中心市街地を活性化させた事例。以下に挙げる様々な成果は、タウンセンターマネージャーが情熱を傾け、地元住民、行政、商業者の共通認識を醸成し、1つ1つ課題をクリアし、達成をした。
〔1〕20年来、再開発を進め、町並みを整備。郊外の大型SC(ショッピングセンター)への対抗策として、地元消費者を取り込めるスペシャリティのある商業集積を目指してきた。大きな変化のきっかけとなったのは、ペデストリアナイゼーション(注)を導入し、歩行者専用道路と広場を確保したことであった。
〔2〕地権者、商業者によるイニシアチブ設立。民間商業者による会費収入の拡大。
〔3〕タウンセンターマネジャーによる初期の店舗誘致活動。以後、安定的な発展により大手企業も出店。店舗の入れ替わりも進む。
〔4〕活性化した商業環境に立地する個店で、環境維持のための維持費用等を支払わず環境のみ享受しようとするフリーライダー(ただ乗り)対策としてのBID導入に取り組むこととした。
(注)ペデストリアナイゼーション:商業店舗が密集しているハイストリートや商店街の中の広場、マーケットプレイスから自動車を追いだし、タウンセンターに歩行者専用の空間を確保する。

中小企業白書2005年版 P164】http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h17/hakusho/index.html