中小企業の資金調達

 診断士の受験勉強に資格の学校のT○Cに通い始めたのが2005年の夏からだったので、中小企業経営・政策のテキストの中身は2004年版の中小企業白書の内容が中心だった。
 そして、そのテキストの中で、一番印象に残っているのが、売掛債権担保融資保証制度を利用し、資金調達を受けた事例を紹介していたものだった。
 2005年版の中小企業白書には、第2部第2章に「多様な資金調達のあり方」と題して、中小企業の特性について、〔1〕資金調達の大半を借入金に依存している、〔2〕従業員規模が小さい企業ほど、円滑な借入れを行えていない企業の割合が高い、〔3〕金利が高く、保証(人的担保)提供をしている割合が高いなど大企業に比べ借入条件が悪い、〔4〕提供している担保のほとんどが不動産である、〔5〕地域金融機関が重要な地位を占めている、といったことをあげている。
 以前経験した部署では、多くの中小企業の決算書をみてきたが、まさにこのとおりであった。
 そして、多くの中小企業の社長さんが、それを疑問に感じることもなく、行動を起こすようなこともなかったということも現実に目の当たりにしてきた。
 そのため、2004年版に出ていた売掛債権担保融資保証制度を利用し、資金調達を受けた事例に、感動すら覚えたものだった。
 詳しくは、ホームページで見てもらうとして、概要を抜粋して紹介する。

事例4-6 売掛債権担保融資保証制度を利用した企業
 J社(神奈川県、電気工事業、資本金3,000万円)は売掛債権担保融資保証制度を利用し円滑に資金調達を行っている。
【売掛債権担保融資保証制度を利用したきっかけ】
 2003年にJ社の取引銀行の一つであるK行の貸出態度が変化し、以前のような借入が困難になってきていた。J社はK行からの借入れに資金繰りを大きく依存しているというわけではなかったが、中小企業にとって円滑な借入は重要なことであり、K行からの借入れの代替方法を探す必要があった。そこでK行以外からの資金調達方法を探していたところ、県から売掛債権担保融資保証制度の存在を教えてもらい、利用することとした。
【本制度を使う上での困難】
 本制度を使うにあたって一番困難だったのは、各関係者の理解を得ることであった。それは売掛金のある販売先のみならず、金融機関の理解も含むものである。販売先に売掛金を担保とすることの理解が得られず、利用することができないことや、金融機関に売掛債権担保融資保証制度について相談に行った際に、当該金融機関で「取り扱ったことがないから、分かりません」と相談にすら乗ってもらえなかったことすらあった。
 J社はこれらの経験から、自社で勉強し逆に金融機関に教えられるほどになろうと考えた。その結果、販売先等に十分に説明を行えるようになり、販売先の理解を得、約30百万円の資金調達を行うことができ、新たな資金調達手段として大いに役立った。
 今では知り合いや、他の取引金融機関からどのように契約をしたのか教えて欲しいとの依頼さえ来るようになった。

 そして、J社の考えが、最後に次のように述べられている。

 J社は「本制度の普及は大企業に比べ円滑な資金調達が困難な中小企業にとって新たな資金調達方法として役に立つものである」と制度の有用性を評価している。ただ、「本制度に対する企業や金融機関の理解不足が否めない。」と制度がまだまだ周知されていないことも指摘しているが、このような現状について、「やる気がある中小企業の経営者は資金調達手法以外のことも、常に勉強している。」と語っている。

 実は、最近お会いした社長さんに、この事例をコピーして渡した。
 「こんなこともできるのですか・・・」と絶句していた。
 「借りられるかどうかは別ですが、こういうふうに資金調達について勉強している社長さんもいるのですね」
 2005年版の中小企業白書には、代表者の資質と金融機関からの借入との関係について、「経営意欲」、「実行力」、「判断力」といった要素が融資審査において重要視されている」という。
 つまり、知識があるかどうかではなく、資金調達をする気があるのかどうかといった、意欲も大きく問われているのに違いないと思っている。