離岸流

 夏休みに入り、週末を行楽地で過ごす親子連れのニュースが微笑ましく報じられる一方、海や山で不慮の事故に遭ったという悲しいニュースも耳にする。
 先週末、やたらと「離岸流」なる言葉を聞いた。
 離岸流(りがんりゅう)とは、海岸の波打ち際から沖合に向かってできる潮の流れのこと。遠浅の海岸を中心に発生しやすいため、海水浴客が知らず知らずに巻き込まれ、沖合に流され事故となるケースがある。
 離岸流の速さは秒速1mを超えることもあるとされており、巻き込まれたら流れに逆らって波打ち際へ戻ることはまず不可能で、離岸流に逆らって泳ぎ切ることは、水泳のオリンピック選手でも困難と言われている。
 もし離岸流に巻きこまれたら、一般的に、海岸線と平行方向(流れに対して直角方向)へ泳ぎだし離岸流から脱出してから海岸に向かえばよいと言われているが、実際に離岸流により沖合に流されると、パニックとなりそのような冷静な判断は難しくなるのだそうだ。   
 離岸流は自然現象であるが、人との付き合いにおいても、良かれと思っていったことであっても、いったんボタンを掛け違うと、なかなか元通りの関係に戻れないことがある。関係修復を試みようとしてもうまくいかない。
 よく美輪明宏さんが、親しき間柄でも腹六分の付き合いとしなさいと話す。
 親でも、子でも、兄弟でも、自分以外の人間と付き合うとき、長く付き合おうと思ったら腹六分にしておく。腹いっぱい付き合ったら必ず亀裂が生じて、馴れ合いが生じて、わがままになって、憎みあうようになる。腹六分で良いところだけで付き合う。それが礼節であり、長く続くコツでもある。
 離岸流は、予見も効こうが、人付き合いはそうはいかない。
 「腹六分」、ちょっとさびしい気もするが、確かに長続きのコツかもしれない。