著作権後進国

 タイ警察の犯罪捜査局が、遅刻など警察官としてふさわしくない行動をとった不心得者に対し、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」をあしらったピンク色の腕章を強制着用させる罰則をスタートさせたと7日の読売新聞が報じていた。
 職員約500人の大半が男性の犯罪捜査局では、無断欠勤や市民に暴言を吐くなど不適切な行為が目に余り、今回のキティ腕章導入前の今年5月、「不良警察官」に対し、紅白の格子じま模様の腕章着用を義務化したものの効果が上がらず、幹部が、「もっと目立ち、人に後ろ指をさされるようなものを」とキティ腕章を考案したのだという。
 風紀担当者は、「男のくせにキティちゃんを身に着けさせられる羞恥(しゅうち)心は相当なはず。効果を期待する」と自信満々だそうだ。
 しかし、そこに著作権の問題が立ちはだかった。
 実は、腕章の図柄のキティちゃんについて、犯罪捜査局はサンリオの許可を受けていない。同局は、「局内の限定的な利用で、著作権は侵害していない」と主張しているが、果たしてそう言いきれるのか。
 そうしていたら、報道の翌日、今度は、犯罪捜査局が、「ハローキティ」の腕章使用を中止することを決めたとのニュースが入ってきた。
 犯罪捜査局などによれば、腕章について新聞で報道されて以降、「著作権の侵害ではないか」との問い合わせが相次いだため、「局内の限定使用で問題はない」としていたが、「警察が著作権侵害を疑われては都合が悪い」と、デザインを元の紅白の格子じま模様に戻すことにしたという。
 行政機関が、著作権侵害を外国企業から訴えられそうになるとは、何ともし難い事態である。
 今回は、未然に防げたからよかったものの、著作権などの知的財産権を適切に処理できることが、先進国の仲間入りの要件であることを感じた。