貸し手責任とクレジットスコアリング融資

 ずいぶん前のことになるが、債権回収の部署にいたとき、融資先の男性が「死んでお詫びします」と家族に遺書を残して自殺した。
 債権回収が取り立てて厳しかったわけではないが、親族に連帯保証をさせてしまったことを、ひどく後悔していたらしい。
 しかし、担当者ではなかったunizouも、何ともいえない嫌な感覚に襲われたものだった。
 そして、それ以降、当時の仕事を思い出しながら、いつも思うことがある。
 「たかが借金ではないか・・・」と。
 貸す側の立場にいた当時から、所詮回収できなくても、10人のうちの1人、100人のうちの1人、いや1000人のうちの1人。いやもっと大勢の中の1人に過ぎない。
 回収できなくても、飲み屋が掛けで飲ませて、回収できなかったのと同じこと。
 貸倒れは、金融の立場にいれば当然のリスクなのだ。
 もし、貸す側がしっかりリスク管理をしていれば、飲み屋の掛けよりリスクが少ないはず。
 だから、借りた側の「命まで・・・」と思う。
 中小企業白書2006年版の「第3章中小企業金融の動向」の中では、クレジットスコアリングのことが出てくる。

 従来の中小企業向け貸出においては、経営者個人の所有する不動産等の資産を担保としたり、第三者保証を徴求することが通常であった。しかしながら、近年、不動産担保や第三者保証に過度に依存することなく、リスクに見合った水準の金利を払う無担保無保証借入ができる選択肢を増やす動きが見られる。特に最近においては、大手都市銀行を中心として、急速にこのような手法に基づく無担保無保証型のローン(クイックローン)が浸透しつつある。
 はじめに、クイックローンの性質を整理しておこう。中小企業白書(2005年版)において見たように、クイックローンの特性としては、
〔1〕母集団となるデータから統計的に算出した倒産確率等によって融資審査を行う
〔2〕貸出案件ごとにリスクを管理するのではなく、大数の法則に基づき、貸出債権をポートフォリオ全体でリスク管理する
〔3〕短期間で融資審査を行う
〔4〕貸出額に限度制限がある
〔5〕審査の多くの部分が自動化されるため、審査コストの削減を図れる

 つまり、倒産確率等によって融資審査をしているのであるから、融資した何パーセントかは貸倒れになることを予見しているのである。もちろん、通常の融資だって同じである。毎期きちんと貸倒引当金を積んでいるのだから・・・。
 きちんと営業をしている会社だって、営業マンが取引先の実情を把握して、もし倒産しそうな兆候が見られたら、少しずつ取引額を少なくするとか、手形を止めて現金のみの取引にするなど、事前に手を打って、被害を最小限に食い止める努力をする。
 これは、金融機関だって同じこと。そんなこともできない金融機関であれば、ただ、預金者から預かっているお金を右から左に流しているようなものではないか。
 だから、借りた側が「借りた金が返せない」からといって、命まで落とすことはないのだ。
 つまり、借り手責任だけでなく貸し手責任もあり、貸す側も、借りる側も商売、ビジネスなのである。
 ただ、以前、ブログでも紹介したが、借り手側は「親類縁者を連帯保証人にすると逃げ道はなくなる」ということは、肝に銘じてもらいたいと思っている。【2006-11-30 中小企業の資金調達2http://d.hatena.ne.jp/unizou1972/20061130
 そして、再起を図るためには、早めの諦め(撤退)も大事なことだと常々思っている。
 ただし、これはお金に限ってのことではあるが・・・。