農業と診断士4

 読売新聞朝刊に連載された「農の挑戦」の5回目(6月23日土曜日)は、「巨大水田で生き残り」という小見出しだった。
 琵琶湖近くの平野部滋賀県木ノ本町千田地区には、1ヘクタールを越える広大な田畑が広がっているという。
 千田地区の農家は大半が兼業農家で、高齢化が進み、以前は耕作放棄地が目立つなど、小さな田んぼだった。
 地元農家88戸が危機感を抱き、1995年7月に農地を集約して生産の効率を図ろうと、農業生産組合を設立、その後農事組合法人「夢ファーム千田」となり、現在まで続いている。
 田畑は、88戸からの借地で、東京ドームの7.5倍の面積、約35ヘクタール。あぜ道をなくし広大化したため、大型トラクターの使用も可能で作業効率が飛躍的に向上した。また、農作業は、原則週末のみで、地元農家が数人で時給1,200円のアルバイトとして田植えなどをする。
 現在、農事組合法人「夢ファーム千田」は経常利益約800万円の年が数年続いているという。
 「農家には、田畑の賃貸料が入り、収益の上がる農業ができ、余暇も増える」と、組合長の野田藤雄さんのコメントが載っている。
 一方、小規模農家の工夫として、長野県伊那市の事例も、紹介されている。
 農家の直営店「産直広場グリーンファーム」には、兼業農家や年金暮らしの農家1600戸が参加し、農産物を持ち込んでいる。
 年金生活のかたわら参加している農家の一人は、「パート代くらいの稼ぎになりますよ」とコメントが載っている。
 「国は、定年や脱サラ後の新規参入など、意欲のある零細農家を支える仕組みも同時に整備していくべきだ」と、筑波大学大学院生命環境科学研究科の納口るり子准教授(農業経営学)の提言も掲載している。
 滋賀県木ノ本町千田地区の事例は、「運営管理」面から見ると、コスト削減を視点にした農業のあり方といえる。農地を集約化し作業効率を高め、人件費を抑制する。
 一方の長野伊那市は、「企業経営理論」面から見た、マーケティングを視点にした農業のあり方といえる。
 今後は、両地区のような試みを全国に広げ、コスト削減やマーケティングという視点だけでなく、診断士としては、産業としての農業をあらゆる視点から支援していくべきだと思う。
 また、当然あっておかしくないのだが、「農業経営学」という分野が実際にあることを知り、今後、機会があれば、是非そういった知識も身につけていくべきだと思う。
 いずれにしろ、裾野が広く、それぞれの産業に関する豊富な知識も必要になる診断士の仕事は、なんと面白い仕事なのかと改めて思う。
 ただ、どの産業にも共通していることは、一生懸命作り、それを一生懸命消費者に提供する。
 どの産業でもその流れは変わらず、消費者がサービスや商品に満足することが、一番のことだと思う。そのための支援をしていくことが、診断士に求められているのだと思う。