農地制度改革・・・生活環境の整備といった未来志向の視点も入れて!

 6月17日日曜日の読売新聞社説に、「農地制度改革―規模拡大の足かせを取り除け」と題した社説が掲載された。
 農業について言及することが少なかった経済諮問会議が、農地制度に焦点を当て、細切れで利用効率の悪い農地の現状に、大胆なメスを入れるように求め、「農業の生産性向上には農地の流動化と集約が肝要だ」といった提言をまとめたという。
 競争力の弱い国内農業を保護すれば、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の締結に取り組む世界各国に日本が立ち遅れてしまうことから、農業の足腰の強化が、市場開放の促進に欠かせないという危機感が背景にあるという。
 提言では、農地所有者に対するアメとムチを盛り込み、アメは定期借地権の創設、株式会社による農地の所有を認め、購入代金の代わりに株式の提供を可能とし、受け取った株式の相続税優遇を行う。
 ムチは、耕作しない農地について優遇税制を見直すべきだとしている。
 このアメとムチを使って、農地を貸したい、借りたいといった双方の環境の醸成や、農地の集約化などを図るといったものである。
 やっと産業としての農業が、まともに語られるようになってきたという感じである。
 しかし、農地については、市街化区域内農地とそれ以外の農地についての問題点が違う。
 農地の集約化といったことでなく、市街化区域内の農地をどのように使うかといったことにも関わってくる。
 できれば、日本人が狭い住宅に平然と住んでいるような住環境から、家庭を中心にした生活をゆったりした居住空間や都市空間で毎日を送れるような環境へと変化させるために、市街化区域内にある農地を産業面から見た農地制度改革だけでなく、生活環境の改善といった面から見た土地の有効利用といった視点でも是非取り組んでいただきたいと思っている。
 また、これは、市街化区域内の農地だけに限ったことではなく、シャッター通りの使われていない商店や空白地などに対する有効利用も同様である。
 これからは、日本人の生活をどういった形を標準とし、どのような形で生活と産業の折り合いをつけた空間の中で日本人が生きていくのかといった視点がどうしても必要なのである。
 今回、農地制度の改革は農林水産省から経済財政諮問会議へと広がりを見せたが、国民の生活環境といった視点からも、国土交通省厚生労働省なども含め、土地利用の未来像を審議していってほしいと思う。
 私たちはこれからの未来一体どういう生活を送り、どういうように働きお金を稼ぐのか?
 そういったビジョンを語る中で、自然と共生する生活環境やそれぞれの産業のあり方も問われるのではないだろうか。
 緑に囲まれた、帰るべきゆったりした居住空間のある家で憩い、そして、また、働くという経済活動に出かけていく。その循環の中で幸福な生活が送れるような未来像。
 遠からずそんな生活が手に入るような状況に世の中が変わる日が来るために、そういったことが検討されることを待ち望んでいる。
 多様化している社会とは言え、政治家には、最低限どんな生活を国民に与えようとしているのか、未来像を語ってもらいたいものだ。