社会保険庁に見る日本的経営の特徴

 こんな身に覚えのない大惨事になって、いくら鳴り物入りで民間から登用されたとしても、普通なら「オレやめた!!!」と言いたくなっても不思議ではない。
 自分が長年関わってきたわけでもなく、就任してから数々の不祥事が発覚した社会保険庁村瀬清司長官のことである。
 村瀬長官に関しては、「火中の栗を拾った人」と言うのがぴったりの表現だろう。
 やめる素振りなど一つも見せずに、路上でビラを配布している姿、国会で質疑に答える姿。
 こう言う人に対しては、どっかの党がやっている足を引っ張るようなやり方はせずに、一生懸命応援してあげるのが筋だと思うのだが・・・。
 さて、これまで起きた社会保険庁の数々の不祥事。
 unizouには、企業経営理論で習う「日本的経営の特徴」がその原因であるように思えてならない。
 社会保険庁は官僚組織であり、一方「日本的経営の特徴」と言えば、民間企業のことなのだから、「どうして、その原因が一緒になるの?」と言われるかも知れない。
 この「日本的経営の特徴」とは、資格の学校のT○Cの診断士講座、「企業経営理論」のテキストに出てくるものなのだが、「終身雇用制」、「年功序列制」、「企業別労働組合」を、「日本的経営の特徴の三種の神器という」と教えている。
 また、この三種のほかに、「常務会」*1による意思決定と「稟議決定」*2も日本的意思決定の特徴であるという。
 「日本的経営の特徴」の「三種の神器」のうち、最近変化の兆しが見られる「終身雇用制」、「年功序列制」については、よく知られていることである。
 ところが、「企業別労働組合」については、日本的経営の特徴と感じることが少ないし、実態が見えない部分であると思う。
 この企業罰労働組合の問題点については、テキストには書かれていないのだが、H講師が教えてくれたことが妙に印象に残っている。H講師は、その問題点を「上司と文化」と言う言葉で表現し、「顔見知りの交渉」と「相互理解が進んでいる」というように教えてくれた。
 今回の社会保険庁年金記録不備でわかった労働組合との協議内容。
 まさに、H講師の言う「顔見知りの交渉」と「相互理解が進んでいる」といったことのデメリットが原因ではないかと思うのだ。
 以前、公務員の友人に聞いたことがあるが、「官庁の幹部になる人の中には、労働組合幹部が登用されるケースがある」というように聞いたことがある。
 労働組合の幹部として労働者である公務員をまとめた功績なのか、執行委員長などを経歴した職員が、最終的には、官庁組織の中の支局長や所長、署長などを最後は務めるといったことだそうである。
 であれば、民間企業で見られる「顔見知りの交渉」と「相互理解が進んでいる」といったことが、当然起きても不思議ではない。
 労働組合の問題点は、当たり前のことなのだろうが、労働者の利益しか考えないこと。
 それも、組織自体の存続意義を全うして、そうであれば問題ないのだろうが、組織自体の存続意義よりも労働者の利益を優先しすぎるからこんな失態が起きる。
 また、公務員の世界では、労働組合が処遇(ポスト)を求めすぎるといった問題もあるという。
 公務員の世界は、まさに、年功序列制度の世界であって、そのデメリットである人件費の上昇とポスト不足が起るのは当然である。
 だから、複線型人事を採用し、それぞれの人事に応じて収入を分け、その収入の中でやりがいのある人生を選択する。 そういったワーク&ライフバランスの取れた生き方をしてもらう。
 いつも言っていることになるが、結局、民間であろうと官庁であろうと、問題が起る日本的風土は一緒で、国会をはじめ世の中の人が、「妥協」による解決を求めるのでなく、「協力」による問題解決をしていくこと非常に重要なことだと思っている。

*1:常務会は、法律上に設置義務がないにもかかわらず、常務取締役以上の上級取締役から構成され業務執行に関する意思決定を行う。

*2:稟議制度は、意思決定に必要な条件を、稟議書により担当部門が提出し、関連上司の合意をすべて得たうえで最終的な決裁をし、実行に移すというもので、根回しの過程があり実行までに時間がかからない、コミュニケーションの強化が可能、記録として保存できるといったメリットがある反面、意思決定までに時間がかかる、責任の所在が不明確、無責任な同意がともないやすいといったデメリットもある。