背美鯨

 今日は驚き+ちょっと可哀想で残念な話。
 12日、アラスカ沖で先月に捕獲された巨大なセミクジラの体内から、1800年代に商業捕鯨で使われていた銛(もり)の破片が見つかったというニュースが、現地ノーススロープ郡の当局者らによって明らかになった。
 同地の野生生物学者クレイグ・ジョージ氏は、このクジラの年齢は130歳前後の可能性があると指摘しているという。
 発見された破片というのは1880年前後に製造されていた爆薬仕掛けの銛の一部で、現地に住むイヌイットが先月に捕獲したセミクジラからの体内から見つかったのだそうだ。
 なんとも驚くべきクジラの長命を伝えるニュースだが、長命ゆえに捕鯨されてしまったことがちょっと悔やまれもする。
 セミクジラの名の由来は、背にひれがないため、その背の曲線が美しいことから来ていて、漢字で「背美鯨」と書く。
 日本でも昔から絵に描かれているのが、このセミクジラだ。
 平均体長15m、体重約50t、温帯から亜寒帯の沿岸に生息あい、動きが遅く、死んでも沈まないことから、肉、油、クジラヒゲ等の目的で乱獲され、現在では捕獲が禁止されているばかりか、日本哺乳類学会では絶滅危惧種に登録されているという。
 捕鯨の際に都合がよいことから、英名は Right Whale、「Right」は「都合がよい」という意味の「よい」だそうだ。
 水産庁のHP (http://www.jfa.maff.go.jp/whale/indexjp.htm)によると、鯨の寿命について、一般に体の大きなクジラが長生きで、一番大きなシロナガスクジラ(30〜25メートル)がもっとも長寿で120才くらい。マッコウクジラ(18〜12メートル)が70才くらい。中型のミンククジラ(10〜7メートル)が50才くらいと言われていることと比べてみても、今回の鯨がいかに長生きだったかが窺える。
 鯨は体が大きいため、飼育して観察することに適さず、まだまだその生態に謎も多いとか。
 何でもすぐ調べられて分かった気になれる現代にあって、こういうスケールの大きな話は時に新鮮だ。