仕事に夢中になりながら頭の3割は会社から離れる

 数年前、社員のライフプランニング研修を担当していて、「何か参考になるもの・・・」と思って読んだ本の中に出てくる見出しである。
 その本の題名は、「頭がいい人の45歳からの習慣術」といい、著者は小泉十三さんで、KAWAIDE夢新書から出版されている。
 本には、45歳を過ぎて人生の後半戦に入った人達に、前半戦でエネルギーを使い果たし身動きが取れないような人生を送ることがないよう、自分を磨き、人生をさらに充実させるヒントが書かれている。
 この本、ライフプランニング研修を担当することになったので読んだのだが、「自分自身がその時期を迎えるために今どんな風に生活したらいいか」ということの参考にもなったし、中小企業診断士を目指す上でも大いに参考になった。そして、昨今の不祥事(株式会社コムスン社会保険庁)を起こさないために、個人レベルでどういう生き方をすればいいのかといった意味でも参考になる本である。
 著者が紹介する習慣術とは、45歳からの「精神の自立」と「行動の自由」をうながすためのものである。
 「しかし、これらを追求する上で、会社に身を置き続ける人にとって、『組織の拘束』が大きなハンディになる」と著者は言う。というのは、組織に属する人は給料をもらうということだけでなく、「組織の文化」の影響を受ける。そして、役所に見るような事なかれ主義や、昨今の不祥事なども、その「文化」のなせるものという。
 著者は、このようなことについて、失敗学で有名な東大名誉教授の畑村洋太郎氏の言葉(「失敗を生かす仕事術」講談社現代新書)を紹介している。

 組織の中で出世している人は、その組織の文化にもっとも馴染んでいるから出世することができたと言うこともできる。そういう人たちには、自分の部下たちに“自由な発想をしなさい”と教えることができるはずはない。また、かりにその言葉を口にできたとしても、自由な発想とは何なのか、なぜそれが必要なのかを伝えることはできないだろう。そういう組織の中で育つ人は、よほど強い意思がなければ、自分を変えていくことはできない。

 耳の痛い言葉である。
 実際、孤独や寂しさに耐えられるような強い意志があるか、よっぽど鈍感でなければ、「精神の自立」も、「行動の自由」も得られないといったことを、数多く経験してきた。
 そんなときどうするか。
 著者はこういう。

 「会社の文化に染まりつつも、一方で、それとは違った新しい道を開拓していく。それをしないと、自分の人生は、本当につまらないものになってしまう。それをするためには、会社の仕事を一生懸命にやりながらも、頭の中の三割は会社の文化とはかけはなれた部分でものを考える必要がある」
 三割という線が微妙である。それが「五割」を超えたら、たぶん組織にはいられなくなる。「四割」でも、不満分子、危険分子と見なされかねない。つまり、「七対三」は、組織内にあって「自立」と「自由」を勝ち取るためのギリギリのラインというわけだ。
では、どすうれば「頭の中の三割は会社の文化とはかけはなれた部分でものを考え」られるのか?
 ひとつの方法は、「会社」ではなく、目の前の「仕事」に没頭することだろう。「会社のため」ではなく、「仕事を成功させるため」に働く・・・そういう意識が常にあれば、必然的に三割くらいは「会社の文化」と切り離されたところでものを考えざるを得なくなる。なぜなら、 「会社の文化」とは、ときに仕事の“足かせ”になることがあるからだ。仕事をきっちり仕上げようとすれば、「会社の文化」とは無縁の発想が必要になるのである。

 確かにunizouも、これまで「会社の文化」に何度も悩まされてきた。そのたびに、仕事に没頭していたように思う。それで、今があるような気もする。
 企業の不祥事にしても、「七対三」の人達が、「これっておかしいんじゃないの?」と声を上げれば、その企業は救われたかもしれない。
 そして、unizouが中小企業診断士になりたいと思うようになって、さらにその意識が強くなったのも、この本のお陰でもある。
 これからも、仕事に没頭しながら、自分の人生を大事にして生きていきたいと思っている。