ダイナシティ使途秘匿金

 読売新聞の5/22日(火)朝刊に、「ジャスダック上場の不動産会社「ダイナシティ」(東京都港区)が、マンションの用地取得に伴う仲介手数料などとして計上した費用の中に、支払先を明らかにしない約6億円が含まれていたとして、東京国税局から「使途秘匿金」と認定されていたことが分かった」という記事が出ていた。
 記事には、税務関係者が「企業のコンプライアンス法令遵守)意識が高まる中、逆行する動きだ」と指摘しているということも書かれていた。
 企業の側から見ると、使途秘匿金も何らかの目的や理由がある支出なのだろうが、企業としても、社会的にもこういった会計処理は問題があるし、根絶すべきであると思う。
 第一に、企業としてのあり方の問題として、税務関係者が言うように企業のコンプライアンス(法令遵)の問題であり、企業会計のあり方に問題がある。
 こういったやり方は、絶対に株主や債権者に不利益を与える。そして、こういった企業が、上場していること自体に問題がある。
 第二に、使途秘匿金の相手方の問題として、受け取った金銭を所得として申告をせずにいれば、課税の公平が保たれない。
 特に、使途秘匿金を支出している業種は、建設業が半分以上を占めているというように記事には書かれており、昔、建設業は暴力団と繋がりが深いと言われていたし、そういった使途秘匿金暴力団に渡っているような風潮が少しでも残っているとしたら、反社会的な行為と言える。
 第三に、これはどんな地位にいる人でも、日本人全般に言える絶対になくしたほうがいいと思う問題である。
 それは、今回、言われている使途秘匿金が、「「元社長らが飲食費に流用」に流用か?」という見出しのことについてである。元社員がそう証言していると書かれていて、真実のほどは定かではないのだが、いつも思うことだが、自分の腹を痛めて、おいしいものを食べたり、遊んだりすることが、この国の人達は嫌いらしいということだ。
 昔言われた官官接待も然り、企業の交際費も然り、福利厚生も然りである。
 一旦自分の収入として入ってきて、税金を負担して、残ったお金を自由気ままに使うより、誰かが負担してくれるほうがいいといった感じである。
 以前ブログで紹介した「部下を動かす人事戦略」(金井壽宏/高橋俊介著、PHP新書)には、次のように書かれている。

「会社の差し出す毒まんじゅうを食うな!!」
 会社がもつ海外視察旅行、上司が飲みくさせてくれる社内接待などがまさに毒まんじゅうの典型だ。仮に上司が宴席の費用を払ってくれたとしても、それは間違いなく経費だから、別に上司が腹を痛めているわけでないのである。それなのにタダで飲み食いをさせてもらったとの負い目は残るから、次にその上司からなにか命令されたら、逆らうわけにはいかないという気持ちに自然となってしまうのである。
 もっとも巧みな毒まんじゅうは社宅である。安い家賃で住めるから、いつの間にか生活レベルが上がってしまう。そうするといざ転職というときも、今の社宅を出ることを考えると、思いとどまらざるを得なくなってしまうのだ。住宅ローンの金利補助も同様である。
 こうして、最初はまず自分の価値観やこだわりを捨てさせられる。次は私生活や家族と過ごす時間が犠牲になる。そして毒が体中にまわると、違法なことや非倫理的なことも、会社のためだという理由で断れなくなってしまうのだ。
 これを防ぐには、「自分は会社に対し、貸しも借りもつくらない」という強い意思を持つ以外にない。あとは誇りを持って仕事をやること。毒まんじゅうを食べるのを拒否して不利な扱いを受けるようであれば、そんな会社はさっさと辞めたほうがいいのだ。

 使途秘匿金などに関わった人達は、こういったことなのだろうと思う。
 結局、自分のもらった給与で飲み食いして、遊んで、楽しんだほうが、何ものにもとらわれない生き方ができるということを、肝に銘じたいものだ。