種苗法(知的財産権等)と中国

 診断士試験の科目の経営法務では、知的財産権等に関する知識が問われる。資格の学校T○Cのテキストにも「知的財産権等に関する知識」として1章が割かれている。
 その章では、特許権実用新案権意匠権、商標権、そして、著作権が大きく取り上げられているが、数行であるが、種苗法についての記載がある。
 産経新聞の1面で特集している「知はうごく 文化の衝突 第三部 日本ブランド」、5月11日(金)の「狙われる農産“芸術品”」の見出しで掲載された内容は、種苗法に関するものだった。
 unizouはかねてから、農業を大事な産業としてコンサルティングしていきたいと思っていて、付加価値のある農業にするため「農業のブランド化」が大事だと考えているのだが、この根本になる種苗法に絡んで、農業のブランド化が由々しき事態となっているという。
 この由々しき事態には、先日書いたブログ「知的財産権と中国、そしてロシア」と同様に、やはり中国が関わっているというから困ったものだ。
 概略は、次のとおり。

 「日本のメロンは世界一」。1玉1万〜2万円の“芸術品”を生産するのは「静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所」。1本の苗に1個しか実らせない「隔離栽培」という手法で、赤ちゃんを育てるように手をかける。同支所の生産者は360人。高齢化でピーク時よりも生産者は減っているが、後継希望の若者は後を絶たない。
 「日本の農業技術の高さは他国に類を見ない」。農林水産省は3月にまとめた「知的財産戦略」で誇るが、海外農産品の攻勢と高齢化の前に、「生き残りには、価格競争ではなく付加価値で勝負するしかない」(同省知財戦略チームの横田美香課長補佐)と待ったなしの状況だ。
 こうした中で、問題となっているのが“海賊版”だ。苦労して開発した農産品の生産技術が不正に持ち出され、被害を受けるケースが後を絶たない。
 農水省所管の独立行政法人「種苗管理センター」は一昨年、“品種保護Gメン”制度を創設。不正農産品などのチェックに乗り出した。
 日本有数のカーネーション栽培地、兵庫県淡路市。世界のカーネーション農家が目標とする栽培技術を持つ。カーネーションは毎年、世界で200品種が生まれ、200品種が淘汰(とうた)されるほど競争が厳しい。より美しい花を求めて栽培技術者は品種改良を繰り返す。完成した花はバイオテクノロジー(生物工学技術)の結晶だ。種苗メーカー「キリンアグリバイオ」のカーネーション苗の世界販売シェアは35%にも達する。しかし、中国から日本に輸入されるカーネーションの8割近くが無断栽培で、育成者権が侵害されているという。この権利は種苗法によって保障されているもので、新品種開発者は、20年間(樹木は25年間)の独占的な栽培・出荷権が認められている。 日本の種苗メーカーが広大な土地と安い労働力を求めて中国で苗の栽培を始めたところ、無断で種苗を持ち出し、栽培・出荷する農業集団が続出。中国では日本の種苗法による規制が効かないため、違法行為も野放し状態で、「青果市場を通さずスーパーなどが直輸入しているものの大半は違法栽培の中国産」。
 カーネーション以外にも、北海道のインゲン豆「雪手亡(ゆきてぼう)」や、熊本県の高級イグサ品種「ひのみどり」が中国で、栃木県のイチゴ「とちおとめ」が韓国で不正に出回り、日本にも輸入される被害が発生。山形県の高級サクランボ「紅秀峰」の苗木もオーストラリアに持ち出され不正栽培された。
 「攻め」の品種改良や栽培技術向上と、「守り」の育成権保護。知的財産をめぐる二正面作戦に、日本の農業の未来がかかっている。

 広大な土地と人件費では、中国などの国々にはとても太刀打ちできない。
 だから、ブランド化と徹底した機械化以外に、日本の農業が生き残る道はないのに、記事のような内容では、一生懸命に取り組んでいる人達の努力が気泡となる。
 私たちは、中国との経済交流で何を得ているのだろうか?
 中国市場がなければ、日本の経済は立ち行かないといわれているが、こういった面を差し引きすると、マイナスのほうが大きいのではないだろうか。
 日本の将来を考える真面目な政治家には、そういった問題をしっかり捉えた上で、外交を考えていってほしいと切に願っている。