上司の品格

 最近ベストセラーになった数学者の藤原正彦さんの「国家の品格」(新潮新書)以降、「・・・の品格」ばやりである。
 しかし、一昨日の読売新聞の投稿欄「気流欄」に掲載された「乱暴な出げいこ 力士は品格を保て」という投稿は、素直に賛同できる内容だった。そして、同時に数年前に同勤した上司を思い出させた。
 投稿の内容は、次のようなものである。
 投稿者は、朝青龍白鵬のファンなのだが、その二人が出げいこで、土俵を割った力士を執拗に攻め立てたり、荒っぽい技を繰り出したりしたため、ケガをする力士がいたことに、「情けない気持ちになった。力士のファンになるのは、単に強さにひかれるからではなく、その人間性が好きであるとか、人のうえに経つ努力をしていることへの尊敬の気持ちがあるためで、二人には、上に立つものとして品格を保ってほしい」というものだった。
 unizouは、以前から朝青龍にそういう気持を持っていたので、「そのとおり」という感じである。最近、相撲だけでなく、「強さ」ばかりを求める格闘技の世界に違和感を持つことが多くなった。
 そして、この記事を読んで、数年前のことになるが、関東支社に勤めていた当時の二人の上司のことを思い出したのだ。
 一人は課長、本社勤務が長く、担当していた仕事はよく知っていて、支店の社員を集めた会議での説明もものすごく上手な人だった。
 しかし、自分のやってきた仕事や自分が切り盛りすることが一番大事で、自分に酔いしれているという感じがする人だった。
 みんなと何かをするのが好きで、スキーに行ったり、ハイキングに行ったり、結婚式の二次会、三次会も一緒という人だった。そういった面では、部下思いのように見えるのだが、どうしてもunizouにはそんな風には思えなかった。「部下のことに本気で関心を持っているのか?」というと、怪しい人だった。
 そして、何よりも嫌だったのは、女性社員を例えば「由美」とか「理恵」といった、名前で呼び捨てていたことだった。
 もう一人の課長代理も、独特の人だった。
 残業が終わると、課内の社員を連れて、飲みに行った。7時から飲み始めて9時までが一次会、それから、ラーメンやなどに二次会に行き11時近く。そして、最後に24時間営業のファミレスへ行ってお仕舞い。時間は、大体0時過ぎになる。これが、ほとんど毎日続く。
 毎日付いて行く同僚もどうかしているのだが、何が彼をそうさせていたのか?
 きっと、同僚が仕事のことを考える時間をなくす(勉強させない)ことと、アイディアを盗むためだったような気がしてならない。
 今思うと、二人に共通することは、「上司としての孤独に耐えられない」ということに尽きるような気がしている。
 上司になると、必ず持つのが孤独感である。だいたい、組織を本気でマネージメントすると、必ず摩擦がある。強さならぬポストでねじ伏せるか、迎合するかのどちらかになっていくように思う。
 ここで大事なのが、「上司の品格」なのである。
 投稿者のいう「単に強さ(ポスト)にひかれるからではなく、その人間性が好きであるとか、人のうえに立つ努力をしていることへの尊敬の気持ち」が、同様に大事なのである。
 unizouは、今でも「本心から部下を思いやってくれた上司」には、どんなに年数を経て離れていても、礼節の気持ちを忘れずに接している。