西武の裏金問題と特待制度

 西武の裏金問題は、高校球児の特待制度まで飛び火して収拾がつかない状況に陥ってしまっている。
 もともと、この問題は別々のことであり、その扱いも対処も、切り離して考えなくてはいけないのに、二つのことが繋がっているというように捉えていることに、混乱の原因があるように思う。
 まず、西武の裏金問題は、根底には、日本社会に共通する仕組みがあって、この仕組みには、日本の不公正な取引慣行や企業がコンプライアンスをいかに軽視していた風土であったかを示している。
 まず、第一に、裏金は、プロ野球界に限った話ではない。
 身近なところで思いつく業種を言えば、病院(医師:全ての病院(医師)とは言わない)がそうである。
 以前、薬品を病院へ納入していた会社に勤めていた友人が、薬品の納入のほかに、いろいろと病院に対し便宜を図っていたという話をしていたことがある。それは、バックリベート(裏金)や、もっと細かいものでは、医者へわいせつな雑誌やDVDを提供していたそうである。
 また、公務員の友人に聞くと、嘱託をしている医師が職員に対する健康診断のために来庁するとき、薬品会社の社員が運転する車で来ていた(便宜供与)という。
 病院(医師)に限らず、学校(教師)も、教科書の選定や副教材(あるいは、ユニフォームや体操着といった衣類など)の納入で、裏金(バックリベート)を受けやすい環境にある。
 こういったことは、病院(医師)や学校(教師)に限ったことではない。
 どの業界にもありうることなのである。
 この問題に関しては、裏金を提供する側に、ステークホルダーに対する責任の欠如とコンプライアンス欠如が見られる。
 そして、便宜を受ける側には、例えば、最初にこの問題に関して槍玉に挙げられた、現金を受け取っていた専大北上高校の元野球部員やコーチなどは、収入を過少あるいは0で申告していたのではないかという疑いがある。もし、そうであれば、課税の公平を大きく損なっている。
 こういった状況を知りうる人達はたくさんいるが、日本の取引慣行に根ざしていて、そんなに悪いことだと思っていないのが現状なのである。
 知り合いに弁護士事務所に勤めている人がいるが、中元・お歳暮がたいそう贈られてきて、所員で分けるのに大変なくらいだという。弁護士の自宅に直接送られるものもあるということらしいと言うから、相当なものである。
 こういう中元・お歳暮の類の発展したものが裏金であり、根底に流れている感覚は一緒なのだと思う。
 企業が、お中元・お歳暮を送るなどは不要のことなのである。
 診断士試験の「運営管理」では、生産のプランニングの購買管理で、競争入札、見積り合わせ方式、随意契約方式について、価格契約の観点でその分類を習う。
 材料を安く仕入れ、良い製品やサービスを提供することが企業本来の目的であり、ステークホルダーに対する責務だとしたら、随意契約方式などなくなるし、裏金など払っている場合じゃなくなると思う。
 そして、もう一つの問題の、特待生制度。
 学業優秀な生徒が受ける特待生制度もある。スポーツに関する特待生制度がないとしたら、それは不公平なことだと思う。
 本来、国が、優秀な人材を育成することを、もっと奨励していいように思う。
 もちろん、何かに秀でていたとしても、知・徳・体のバランスがいい人を選んで欲しいという条件はつけておきたい。
 それにしても、スポーツをするにも、遠征費用やユニフォームなどに、お金がかかりすぎていると聞く。
 周辺ビジネスの影響なのかもしれないが、もっと、スマートに、そしてスリムになっていかないだろうか。 そういった点は、再考する必要があるかもしれない。
 裏金問題など社会の不公正な慣行を解決するのには、税務に携わる人達のがんばりに期待するところがある。
 課税の公平そのものが国民の意欲の根幹を成すもので重要な使命であるが、意外と社会の不公正な慣行を知りうる立場にあることから、そういった面からも、がんばって欲しいと願っているのである。