組織力

 「何やってるんだ!自分だけで、解決できると思ってたのか!」
 「はい、甘く見てました。それに、周りにはこんな状況であると話していましたが、あまり重要ではないといった感じで、後でいいといった雰囲気でしたので、自分だけでやってました」
 「何を言ってるの?君のやってる仕事は、君だけで済むような話じゃないんだよ」
 入社4年目で真面目で、しっかりしているK5君との会話である。
 期限間近になっているのに、自分で何とかしようという真面目さゆえに大量の未処理を抱えていた。
 今日、お客との1件のトラブルからわかったことである。
 K5君は隣のグループの社員であるが、いくつかのグループを統括しているunizouの進行管理の落ち度だった。
 しかし、自分の責任は痛感しているものの、納得いかないことが多い。
 周りの社員の対応、K5君のグループ長やunizouの補佐社員の問題意識。
 大体、こういった問題を周囲が知っていたのに、何のアドバイスもせずにいたのが不快な出来事だった。
 K5君と経験年数が多い社員には、給料の格差があるのに、である。
 どの会社でも、きっと定期的に多少の給料の昇給はあるだろうと思う。
 経験を重ねれば、ポストに就かなくても、それだけのノウハウを持ち、エキスパートとしての価値が付加されていくというのが、その理由だと思う。
 成果主義で給料が決まるのであれば、経験が実績に現れなければ、給料は上がらないだろう。ところが、成果主義でなく、多少でも毎年給料が上がっていくシステムを、生活給のごとく感じている社員が如何に多いか・・・。
 入社4年目のK5君も、入社10年目の社員も同じような仕事の仕方をしている。
 入社4年目のK5君が、自分の仕事を終わらせることだけを考えているのなら仕方がない。
 しかし、入社10年以上経っても、自分の仕事のことしか考えていないというのは、どういうことなのか?企業としては、完結した商品やサービスを提供するのが大切なことなのである。自分の受け持ったパーツだけが終われば、それでいいということではないのである。
 職人がたった一人で、物を作るのとは訳が違う。
 企業になれば、大量の作業を、多くの人間が分担して終わらせることになるが、それぞれが自分の持ち場の責任を持つのは必要だが、組織力で対応することが重要なのだ。
 診断士の試験科目では、企業経営理論で組織論を学ぶ。
 しかし、実際に、組織が組織力を発揮できるよういするために、社員の意識を変えるのは非常に難しいことだと痛感している。
 今回の件で、K5君には大分きつく叱った。帰りにコーヒーを奢りながら、「本当は、K5君は人身御供だよ。組織として、みんなの力がシナジーになるように、unizouもマネージメントしなければならないし、みんなもそういった意識に変わって欲しいんだよ」と伝えた。
 自分で実践するのも難しい組織の構築といった重いテーマを、診断士はクライアントに伝えていく。診断士の仕事が、改めて幅広く、大変な仕事だと感じている。