はげたか

 NHKドラマ「はげたか」がひそかに人気を博したせいか、8日日曜日の朝日新聞の朝刊に「はげたか」の文字が躍っていた。
 記事の内容は、不良債権を買い取って貸付金を回収する整理回収機構が、借り手の会社や経営者ら個人を破産させて回収を急ぐ姿勢を強めているというものだった。
 舞台は、栃木県日光市川治温泉の柏屋ホテル。整理回収機構は、直接の債務者であるホテルに加え、社長と社長の母で女将だった人にまで、連帯保証を理由に2月15日に個人破産を申し立てたという。
 「85歳の母までとはひどすぎる」と社長は言い、母親は心労のためホテルに隣接する住宅に寝込んでいるが、そこも立ち退きを迫られているという。
 また、ホテルの出入業者には、「2月14日以前に発生した債務の支払いはできません」とFAXが届いた。
 「事前に何の相談もないまま、FAX1枚で債権カットはあんまりだ」と憤り、長年食材を納めている業者の一人は、『破産で業者の債権を帳消しにして、自分だけうまい汁を吸う。まるではげたかです」と言っている。
 こんな書き方をされたら、整理回収機構は血も涙もない組織で、そこに働いている人間も、鬼か魔物かといった風に思われてしまうだろう。
 仕事とは言え、本当にお気の毒である。
 さて、栃木県は、地元の銀行である足利銀行が破綻して国有化されたため、温泉地の旅館だけでなく、あらゆる業種で融資の状況は厳しいものがある。
 だから、経営が行き詰まった原因を、足利銀行のせいにしてしまうケースが多く見られる。
 だが、これは非常に短絡的であり、無責任極まりないことだと思う。
 足利銀行が破綻した、しないということより、もともと、全国の温泉地の多くは観光客が減少し、昔の賑わいのないところがほとんどである。
 長野県の戸倉上山田温泉、松本の浅間温泉など、一度行ったことのある温泉地も、もう随分前からそんな状況だったし、栃木県の温泉地然り、お隣の群馬県の温泉地も然りである。
 だから、栃木県に限って言えば、「鶏が先か?卵が先か?」と同じように、足利銀行の破綻が先か、もともとの融資を受けたところの経営がまずかったのが先かといったようなものだろうと思う。
 そして、なぜか温泉地に人が来なくなったのかといった理由を、個々の旅館単位で考えることはあっても、温泉地全体として考えることがないように思う。
 そういったことをせずに、整理回収機構を責めるのである。
 まず、自らを省みるべきではないか?
 経営者の責任を考えれば、社長も女将も、経営から退かなければいけないのはやむをえないのではないだろうか?
 破産をすれば、そこで責任は区切ることができる。
 また、出入の業者の言い分もおかしいように思う。商売をやっている以上、相手の支払い能力を調査するのは当然のこと。もし、万が一に貸し倒れになることも、想定の範囲内でなければいけない。
 自分でやるべきことをせずに、甘えの構造の中、「中小あるいは零細企業なら許される」と高を括っていたところがあったのだろう。
 新聞が報道する姿勢が判官びいきでは、日本の将来に禍根を残す気がしてならない。