動産42000個

 ついこないだ、カニを担保にした融資について書いたが、こういった在庫担保融資を可能にした制度に動産譲渡登記制度がある。
 平成17年10月3日に、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」が施行され、動産譲渡登記制度が運用を開始し、かれこれもう1年半近くになる。
 法律系雑誌「民事法情報」の1/10号に、法務省民事局の方が書いた「最近における動産・債権譲渡登記制度の動向について」という特集記事が掲載されていた。
 動産譲渡登記制度は、動産の譲渡について登記することにより、民法上の「引渡し」と同様の法的効果(対抗要件の具備)を付与するとともに、登記されたことを一般に公示する新たな制度である。
 近年、企業が保有する在庫商品や機械設備等の動産を活用した資金調達の手法が注目される中、そういった資金調達を円滑化を図るため、創設されたものだ。
 施行後約1年でどのくらいの登記申請がなされたのだろうか。
 記事によると、運用開始から平成18年10月までの登記の申請件数は、約1,000件、登記された動産の個数は、約42,000個に上るそうだ。そして、登記される譲渡のほとんどは、譲渡担保契約又は実質的に資金調達を目的とする売買契約等を原因とする譲渡だったようだ。
 現在、経済産業省や実務界を中心にABL(Asset Based Lending)の普及・定着のための取組みが積極的に進められていることから、動産を活用した金融手法の普及いかんが、登記件数の伸びに大きくかかっていると言えよう。
 譲渡するからには、その法的効果を認めるために、譲渡にかかる動産が具体的に特定されていなければならない。①動産の特質によって特定する方法(個別動産)と②動産の所在によって特定する方法(集合動産)がある。
 日々内容が変動する在庫商品は、当然後者、動産の所在によって特定する。面白かったのが、海上に存する船倉内の漁獲物を譲渡したケース。動産の保管場所を船舶の名称等とする登記申請が受理されたそうだ。
 これまでの実績では、個別動産が3割、集合動産が7割という結果。
 カニ以外にも、ワインや豚が担保となった事例を過去、ブログに書いたことがあるが、このほか、旋盤、プレス機等の機械器具類や米飯類、海産物等の食料品類、貴金属類や畜産物など実に様々なものが登記申請されているらしい。
 資格の学校のテキストなどの教材も在庫担保の対象となるのだろうか?
 これからも金融機関がどういった動産に担保価値を見出していくのか、ちょっと注目してみていきたい。