格差社会のなれの果て

 「衣食住が保証され、病気になっても面倒見てもらえる。快適ですよ。ちょっと厳しい老人ホームって感じですかね。」
 このコメント、どんな人のコメントかというと、窃盗で四年前から服役中の76歳男性のものだ。現在4回目の受刑生活で、過去の服役期間の合計は20年に上るという。
 これは、3/14の読売新聞夕刊でズームアップWeeklyで「高齢受刑の現実」と題された特集記事。
 中には「シャバに出て金がなくなったら、わざと捕まって戻る人」もいるという。
 足腰が弱る、持病を抱えるなど、一般受刑者と生活できない高齢受刑者は、毎朝刑務官が一人づつ声をかけ起こし、作業も一般より2時間短い軽作業のみの6時間、廊下には転倒事故防止用の手すりも設置されている。
 こういった配慮が、「出戻りの魅力」になっているとか。実際、法務省によると、60歳以上の刑務所への新規入所者は激増中だとか。
 NHKスペシャルで反響を呼んだ「ワーキングプア」。
 ワーキングプアとは、働いているのに生活保護水準以下の暮らししかできない人たちのこと。生活保護水準以下で暮らす家庭は、日本の全世帯の約10分の1。400万世帯とも、それ以上とも言われている。
 大学や高校を卒業してもなかなか定職に就けず、日雇いの仕事で命をつないでいる若者。  
 非正規雇用で、3ヶ月ごとの更新に不安を抱えながら働きつづける父親。
 昼夜なく働いても、食べていくのが精一杯の母子家庭、行政の生活手当も減らされる予定で子供の教育や将来に暗い影を落としている。
 彼らは、それでも自ら汗して働いていた。
 一方、自ら生計を築くことを放棄し、軽微な犯罪を犯して刑務所へ出戻る高齢者たち。犯罪者なのに税金で生活を保証してもらっているとも言える。社会復帰のためと言う理由もあろうが、本当に社会の矛盾を感じずにはいられない。