農業と診断士Ⅲ 農業における亀山産

 先日、新幹線で移動中に「2005年9月に解禁された株式会社などの農業参入が想定より進んでいない。参入企業・法人184社のうち11社がすでに撤退、10年度までに500社という参入目標も下回る公算が大きい」という電光ニュースを見た。
 一体、どういうことかと気になったので、少し調べてみた。
 平成17年9月1日に施行された農業経営基盤強化促進法改正により、農業生産法人以外の法人のリース方式による農地の権利取得が可能になったという。
 農業者の高齢化や世代交代が進む中で、全国で38万haにも達している耕作放棄地を解消することが国内農業の活性化には不可欠で、担い手不足により耕作放棄地が相当程度存在する地域で、地域活性化と農地の有効利用の観点から実施されたというのだ。
 農林水産省ホームページ「一般企業の農業参入ができるようになりました」http://www.maff.go.jp/soshiki/keiei/nouchi/shiensaito/pamphlet0702.pdf
 当初、資本力のある株式会社が参入し、農業の経営合理化・効率化が図れるのではといった期待も高かったようである。
 反面、制度では、賃借対象は比較的条件の悪い耕作放棄地に限定され、株式会社が直接農地を所有することは引き続き認められず、自治体との協定締結に際しても、撤退の際は農地の原状回復を求められるなど、株式会社側にとってはなお、使い勝手が悪いとの声もあったようだ。
 YOMIURI ONLINE>マネー>特集>経済なるほど!経済 「国内農業 活性化へ期待 株式会社の経営 解禁へ」
 http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/47/naruhodo209.htm
 農業・漁業など、食に絡む産業は、人間の生存に関わる問題であり、産業として衰退はありえないし、あってはならないことだと思う。
 亡くなった恩人は、娘さんから「普通の人は生きるために食べているけど、お父さんは食べるために生きているね!」といわれたくらい食を楽しむ人だったが、そういう人がいるくらい人間にとっては大事な産業なのだと思う。
 一方、シャープの液晶テレビAQUOSを生産している亀山工場。
 IT不況下の平成14年2月に、三重県の企業誘致政策により、135億円(三重県90億円+亀山市45億円)の補助金とともに誘致され、景気回復のシンボルとして、また、世界初となる最新鋭の液晶テレビの一貫生産工場として話題を集めた工場である。
 今では、亀山工場で生産された液晶テレビは「亀山産」と呼ばれ、工場名がひとつのブランドとして成立しているという。
出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%97%E4%BA%80%E5%B1%B1%E5%B7%A5%E5%A0%B4
 米でも野菜でも、企業が作った「○○産」ブランドを見てみたいものだ。
 いずれも、産業には変わりないが、どうして農業ではこういったことができないのだろうか。
 原因は、トルストイ民話集「イワンのばか 岩波文庫 中村白葉訳」の「人はどれほどの土地がいるか」に見るように、「土地に執着するという人間性」に起因している気がならない。「2005-10-10 中小企業な農業」参照http://d.hatena.ne.jp/unizou1972/20051010
 であれば、「公共の利益」から農地の所有者に制限を加えていく必要があるように思う。
 実際、耕作放棄地だけでなく、農業を産業としてコスト意識を持って従事している人がどれだけいるのかということであり、ただ、先祖代々の土地だからと持っている人が多いということだと思う。
 確かに、戦後の農地解放によって、奴隷的な小作制度は改革された。
 しかし、これから先、農地所有に関する改革をせずに放置しては、土地は荒れ、食料自給率もままならないことになる。
 そして、近代的な産業として農業を位置づけにするために、企業の参入は絶対に必要だと思う。
 農業という産業に従事する人が、ネクタイで農地に出勤し、作業着に着替え、○○産の世界に通用する付加価値の高いブランド農産品を作っていく。
 診断士として、そんなことに関われるのはいつのことだろうと思っている。