劇的再会

 就職同期との「定例会」という名の飲み会は、依然続いている。
 先週の金曜日がその開催日だった。開催地は新宿、お店は「全聚徳(ゼンシュウトク)」。幹事の「うまいものにしよう!」の一声で、北京ダックの名店に決定した。
 世界の三大珍味といえば、キャビア・フォアグラ・トリュフ、ちなみに日本の三大珍味と言うと、ウニ(塩うに)・カラスミ(ボラの卵巣の塩漬け)・このわた(なまこの腸の塩辛)らしい。それが、中華なら、ふかひれ、ツバメの巣、北京ダックか(食材的にはそれほど希少価値はなさそうだが…)。
 皆が北京ダックで盛り上がっている傍ら、unizouは少し憂鬱な気分でいた。
 実は、unizou、高校生のとき、中華料理店(ちゃんと円卓だった)で北京ダックを食して以来、その油っこさだったり、甘味噌との愛称がいまいちだったり、何と言っても1羽頼んでも皮しか食べないその理不尽さだったりetcが理由で、あまり好んで食べたくない一品となっていた。
 しかし、「全聚徳」の北京ダックは、まさに目からうろこな一品だった。皮はパリッと香ばしく、油はジューシーなのにさっぱりしていて驚きの食感だった。
 「全聚徳」は、清朝同治三年(1864)年楊全仁によって創業され、現在五代目を数える北京ダックの専門店である(http://www.zenshutoku.com/index.htm)。
 企業として国営化され、現在は傘下に50以上の企業があり、中国の外食産業のリーダー的役割を果たしているのだそうだ。北京の創業店「前門店」のほか中国国内に60以上の店舗を持ち、日本をはじめとする海外進出も行っている。
北京ダックの歴史は、明代に遡り、「金陵ダック」と呼ばれていた明朝宮廷の高級料理が起源とされる。15世紀初期に、明朝が都を北京に移すと同時に、ローストダックの調理技術も北京に伝わった。その後北京ダックは皇帝や宮廷の人々に愛され、清の時代には宮廷料理としての地位を確立した。
 全聚徳の創始者である楊全仁氏は、鶏やアヒルの肉を売って生計を立てていたところ、干し果物屋「徳聚全」が倒産したのをきっかけに、全財産を投じてその店を買い取った。その後、風水師のアドバイスに従い名前を逆さの「全聚徳」に改め、宮廷で炙り鴨を調理していた料理人を迎え、炙り炉による絶妙な美味しさの鴨料理を民間に普及させ、五代を経て今の地位を築いたのである。
 今で言う企業買収あり、商号変更ありだ。逆さにしても商号として成り立つところが、漢字文化の面白さ。
 鴨で一番おいしいとされる胸部分の皮は、たっぷり砂糖をまぶしていただく。これが激ウマ。宮廷の女性に流行っていたというこの食べ方は、口に入れた途端、甘味とともに豊潤な旨味が溶け出し、本当にやみつきになる。
 北京ダック三昧なぜいたくな時間を過ごし、半年後にまた来ようと約束して店を後にした。ブログをお読みの皆様にも是非お勧めしたい。