どっちが正しいの?

 心の病で一昨年に数ヶ月休みを取り復帰したK君は、本当に一生懸命仕事に取り組む。
 隣の先輩が教える仕事もすばやく呑み込んで、たくさんの案件を処理する。
 また、結果も間違いがほとんどないので、信頼できる。
 しかし、K君はあることを考え込んでしまうと、眠れないような状況に自分を追い込んでしまう。
 今、彼が、気にしていることは、中堅社員となる数人の先輩の仕事に対する態度である。
 先輩社員Tさん、Hさんの「自分の仕事さえ終わればあとは関係ないや」ということが、どうしても許せないという。
 そして、そのことを暗黙に態度で表すために、無理に電話や来客の対応をしないという風にしている。
 怪訝なのは、TさんやHさんを含む周りの人間である。
 「何やってんだよ!電話、お客に対応しろよ!」といった顔を見せるが、結局「心の病だったから、言っても仕方がないか・・・。頭にくるけど・・・。」となり、誰も文句を言わない。
 unizouは、どういう理由でそういう態度を取っているか聞かされているので、今は、K君の対応にあえて何も言わないことにしている。
 K君が最初に心の病になった原因は、K君の話によると次のような理由だった。
 入ってきたばかりだったK君は、指導役の先輩社員H2さんと本当に一生懸命仕事をした。仕事をすればするほど、就業時間内に終わらなくなる。だから、残業をして終わらせていた。残業をすることをいとわないくらい、仕事熱心だった。以前同勤していた者に聞いたことがあったが、先輩社員H2さんとのコンビは最高で、「これは伸びる。期待が持てる。」といった感じだったという。
 しかし、その先輩H2さんは飲みニュケーションが好きだった。仕事に区切りがつかなくても、「先輩から誘われたら、どんなことがあってもついていくものだぞ!」と言っていたという。
 誘われれば仕事ができない。仕事ができないので、仕事がたまる。仕事がたまっていってストレスになる。こういう悪循環で、消化器系の病気で体調を崩したという。K君は、これで先輩から誘われても飲みに行かずに仕事ができると思ったというが、実際は、まったく飲みにいけないこともストレスになったらしい。
 unizouにもあるが、飲みに誘われて、何だか断ったことが気になることはしばしばある。
 無理に出てもストレスになるし、出なくてもストレスになるということは多い。
 結局、K君が病気になった原因は、少し無頓着にしている人からすれば、大した理由ではない。しかし、K君にとっては、大事なことだったのだ。
 原因がわかれば、対処の方法はあった。当然、部下は先輩や上司の所有物ではない。
 仕事を遂行するパートナーなのだ。そうすれば、先輩社員H2さんが取るべき態度は一つだった。
 話を元に戻すと、今、K君が問題としている先輩社員のTさんとHさんの態度は、unizouも問題としているところ。やり方はベストとは言えないが、荒療治にそのままにしておこうと思う。
 先輩社員のTさんやHさんが、心の病だからと片付けていることが、根っこは自分側にあったと、本当の意味で「どっちが正しいの?」と素直に考えてくれるようになったら、めっけ物かもしれない。
 ただ、K君がそのことでストレスをためないように、絵葉書を渡した。
 そこには、
 「いつも そばにいること わすれないで。大丈夫。君は一人じゃない」と書いてある。
 純粋なゆえに傷つきやすい。そんなことがあっては、絶対いけない。