それでも僕はやってない
邦画が最近好調らしい。
06年の邦画の興行は、1077億円の興行収入で21年ぶり洋画を逆転したという。
確かに最近の映画のCMでも、邦画のものが多い。
先日も、知人が「これは面白い映画だよ!」と教えてくれた。
その映画は、「それでも僕はやってない」という映画で、監督は「Shall we ダンス?」の周防正行さんとのこと。
知人が言うには、サスペンスでもなければ、ヒューマンとも言えないのに、観客がせりふに聞きいっていて、劇場内はシーンとした雰囲気なのだそうである。そして終わった後に酷くむなしくなるという。
ちなみにストリーを公式ブログ(http://www.soreboku.jp/index.html)で読んでみた。掻い摘んで紹介すると次のような感じ。
フリーターの金子徹平(加瀬亮)は会社の面接に向かうため朝の通勤ラッシュで混雑する電車に乗る。乗換えの駅(岸川駅)で降りるとホームで女子中学生から声をかけられる。
「いま痴漢したでしょ」
「えっ?痴漢?」
ホームの駅員が騒ぎに気づいてやってきた。話せばわかってもらえる、そう思いながら、駅員に促されるまま駅事務室へと向かう徹平。しかし駅事務室ではなにも聞かれないままに警察官に引き渡されてしまう。「話は署で聞くから、すぐ終わるから」言われるままにパトカーに乗り込む・・・。
警察署では頭ごなしに刑事に怒鳴られる。「ボクは何もやってないんだ」徹平のそんな訴えには耳も貸してもらえない。 事情を聴いてもらえないなら話しても仕方がない、帰ろうとしたその時、刑事に手錠をはめられる。
留置房の中で同房の詐欺師に教えられて「当番弁護士」を呼んだ。一回目はタダで相談に乗ってもらえる制度があるという。当番弁護士はすぐに来て話を聞いてくれた。しかし、そこでの話もまた過酷だった。
「否認してれば留置場暮らしだ。訴えられて裁判にでもなればヘタをすれば三ヶ月くらい出てこられない。そのうえ裁判に勝てる保証は何もない。有罪率は99.9%だ。千件に一件しか無罪はない」
「・・・やってないんだ」
つてをたどってようやく引き受けてくれたのは、元裁判官の弁護士・荒川正義(役所広司)と新人女性弁護士・須藤莉子(瀬戸朝香)。
警察署、そして検察庁での取調べ、どこへ行っても徹平は自分の主張をまともに聞いてもらえなかった。確かな証拠もないのに検察が起訴できるはずがない、そんな弁護士の言葉を信じて否認し続けた。
しかし検察が起訴し、法廷で争うことに。
知人が言うには、「周防政行監督は、日本の裁判制度の問題点を問うている」ということらしい。
ところが知人の話をどう聞いても、問題なのは刑事のような気がしてならなかった。
最近では、何かというと「制度をいじって何とかしよう!」ということが多いような気がする。たとえば「ゆとり教育」なんて、最たるもののような気がする。使う側の人間が変わらないのに、制度ばかり変わっている。尊敬する政治家で、既に亡くなった伊東正義氏が自民党の総理総裁に請われたときに、「本の表紙を変えても、中身を変えなければだめだ」と固辞したのと同じことのような気がする。
確かに問題のある制度はたくさんあると思う。しかし、みんなに都合よくて、100%のものは、なかなかありはしない。裁判制度も然りだろう。
一番の原因は刑事が忙しさゆえに、いい加減な「思い込み」によって犯人としてしまったこと。
そして、それが、検察官に、そして裁判官へと伝播していったこと。
もちろん、検察官も、裁判官も、当然その職責を公平忠実に行えば、どこかできちんと正されたかもしれない。
そう考えれば、問題なのは制度でなく、本来やるべきことを怠った人間だと思うのだが・・・?