職業選択

 テレビ朝日報道ステーションで、「イラクへの派遣命令を拒否し、軍法違反に問われた日系3世のエレン・ワタダ中尉(28)に対する軍法会議が5日、西海岸ワシントン州のフォートルイス陸軍基地で始まり、泥沼のイラク情勢を反映し、米国各地の反戦運動の象徴的存在となっている」というニュースを見た。
 ワタダ中尉は法廷で、「『イラクでの戦争は不法であると感じていた。(派遣拒否以外に)選択の余地はなかった』と述べた」ということだった。
 どうもこの人の態度は、腑に落ちない。
 エレン・ワタダ中尉の父親も、同様にベトナム戦争の派遣命令を拒否していたといっていた。
 “派遣拒否”でなく、もっと以前に“軍人を辞める”ことを選択すればよかったと思う・・・。
 国家に仕えて、報酬をいただいているのであれば、どんな選択であっても国家として決めたことに意見をさしはさむことはできないと思う。
 それが嫌なら、その地位を捨て去ってから行うべきだと思う。
 しばらく前に買った本で、日本共産党ナンバー4の政策委員長で不祥事を契機に議員辞職、離党した筆坂秀世氏の「日本共産党」(新潮新書刊)に、次のような記述があった。

 党の決定は、無条件に実行しなければならない。個人は組織に、少数は多数に、下級は上級*1に、全国の党組織は、党大会と中央委員会にしたがわなくてはならない。
 先にも述べたように、日本共産党はもともとコミンテルンへの加入には、(共産主義インターナショナル)日本支部として誕生した。このコミンテルンへの加入には、「共産主義インターナショナルに所属する党」は、民主主義的『中央集権制』の原則にもとづいて建設されなければならない。現在のような激しい内乱の時期には、党がもっとも中央集権的に組織され、党内に軍事的規律に近い鉄の規律がおこなわれ、党中央が、広範な全権を持ち、全党員の信頼を得た、権能のある、権威ある機関である場合にだけ、共産党は自分の責務を果たすことができるであろう」(日本共産党中央委員会出版部刊『日本共産党綱領集』所収の「共産主義インターナショナルへの加入条件」)など、さまざまな条件がつけられていた。

 少数意見を大切にしているように気がしていた日本共産党でも、「少数は多数に」、「軍事的規律に近い鉄の規律で」といった、組織として決まれば従わざるを得ないということ。
 エレン・ワタダ中尉が意見を言ってはいけないと言っているわけではない。意見を言うのであれば、まず立場を変えてから言うべきだと思うのである。そして、反戦運動の象徴のように扱われて英雄になってはいけない。彼の友人は、すでに国家のためにイラクに派遣されているのだから・・・。
 それにしても、最後に古館アナウンサーが言った一言がどうも気になる。
 「アメリカ、アメリカの人たちは、アメリカ兵の死者ばかりを数えないで、イラクの人がどれだけ死んでいるかを問題にすべきだ」というようなことだった思う。
 しかし、イラクの人たちを殺傷しているのは、原因の探索は別として、一部のイラク国民そのものであり、反アメリカのテロリストたちなのに・・。
 職業選択をしたのなら、その職責を全うすること。
 それができないなら、まずその職業を辞めるのが筋である。

*1:上から下への一方通行だけで成り立っているかの表現ということで、「民主的な議論をつくし、最終的に多数決で決める」「決定されたことは、みんなでその実行にあたる」と改訂されたそうである