赤字企業と中小企業診断士

 国税庁から発表されている「平成17事務年度における法人税の課税事績について」によると、企業の7割が赤字である。この割合は、随分前から変わらないという。【http://www.nta.go.jp/category/press/press/h18/5314/index.htm
法人税の申告の状況によると、次のように記載されている。

2 法人税の申告の状況(別表2)
○ 平成17事務年度(平17.7.1〜平18.6.30)中に申告期限が到来したもののうち、申告のあった件数は276万7千件で、前年度に比べて2万5千件(0.9%)増加。
○ 黒字申告割合は31.9%で、前年度に比べて0.4ポイント上昇。
○ 申告所得金額は50兆3,974億円で、前年度に比べて7兆2,239億円(16.7%)増加。
 これを黒字申告1件当たりでみると5,661万円で、前年度に比べて14.5%増加。
○ 申告欠損金額は22兆7,154億円で、前年度に比べて6,422億円(2.7%)減少。
 これを赤字申告1件当たりでみると1,183万円で、前年度に比べて3.1%減少。

 一体、どうしてこんな状況でやっていけるのだろうか?
 税金を払いたくないから、赤字にしているのだろうか?
 単純に考えれば、企業を将来大きくする予定がなく、設備もなにも更新しないのであれば売上―経費=0で構わない。経費の中に、従業員の給料も入っているのだから、従業員の給料で源泉所得税を納付しているのであれば、企業としての存在価値はあるというもの。
 しかし、赤字では、借入れによる資金調達で運転資金を捻出しなければ、いずれニッチもサッチも行かなくなるのは自明の事。
 ましてや、設備投資を考えているのであれば、本来赤字ではやっていけないはずである。
 以前紹介した「『資金繰り』がわかる本」【北條恒一著 PHP文庫】の「26 大会社ほど真剣に考える『資金繰り』」には、「上場企業である大会社は有価証券報告書に資金の収支を記載して一般に公表することになるので、資金収支がマイナスだというと、投資家である株主は、こんな状況で配当をもらえるのか心配になる。株価にも影響するのではないか。そして、株式会社日立製作所の資金収支を見ると、事業活動に伴う収支(9.4.1〜10.3.31、10.4.1〜11.3.31)では随分苦労していて、資金計画(11.4.1〜12.3.31)では、何とか辻褄を合わせようと収支プラスマイナス0という計算書にしているという。
 大企業がこうなのであるから、中小企業がどうすべきかは、わかろうというもの・・・。
 もちろん、経営が黒字でも、資金繰りがダメではダメである。
 ちなみに、同書の「8 資金繰りで経営者の手腕がわかる」に、「これでは経営者の資格はない」といういくつかの例がある。
 会社の経営は順調で資金繰りもうまくいっているとき、恣意的に経営者が資金を動かすといった場合。
流動資金の場合

  1. やたらに役員報酬をふやし、経営者の懐ばかりあたたかくする
  2. 交際費を無計画に使う

固定資金の場合

  1. 経営計画の一環としては今のところ無用な建物や土地の取得に使う
  2. 自家用の高級乗用車をやたらに購入する
  3. 必要のないゴルフ会員権を次々に買い込む

 いずれにしろ、企業の7割が赤字企業なのであるから財務面だけのコンサルティングを考えれば、中小企業診断士の登録者数が約18千で赤字企業が約188万であるから、診断士一人当たりにすると約100社ということ。顧客がこんなに多いということだけでも、相当やりがいがあるということかしら・・・?