貸し手責任

 予定していた貸出を中止したり、回収したり、融資にあたって弱い立場の者を差別する。
 また、借り手の返済能力・返済意思を十分に確認せずに、信用を供与する。
 こういったことを融資時にした場合、金融機関は責任を問われる。
 特に、借り手の返済能力・返済意思を十分に確認せずに、信用を供与するといったことは、銀行だけでなくよくある話であり、最近、こういったことをいとこの友人という身近な話として聞いた。
 いとこの友人は、販売・設計・施工・アフターメンテナンス・リフォーム・宅地分譲、賃貸住宅管理等などを行っている  大手住宅販売会社の下請けとして個人事業主として仕事をしている。
 彼の収入は毎月約30万円、多いときで40万円くらい。
 もちろん請負なので、ボーナスもなければ、材料費を大手住宅販売会社に支払っていて、実際の所得は20万円から30万円くらいである。
 その所得を独身で田舎暮らしの彼は、家賃、光熱費、通信費などで約10万円、租税などで約5万円払えば、食費に約5万で何とか暮らして行けるかもしれない。
贅沢をしないで、我慢して本当にぎりぎりの生活だろう。
 ところが、こんな彼の収入状況なのに、借入金がすごいのだ。
 まず、数年前に新車で買ったトヨタプレミオと事業用のトラックの借入金が、約450万で返済期間があと3年程。返済額が合わせて10万円だという。
 ほかに、金融機関のローンが100万円ほどあり、返済額が約2万円。
 これでは、収入が多かったときはいいが、30万円の収入では不足する。
 そのため、生活が苦しくなって、サラ金から借りた約100万円も金利負担もあって毎月相当な額を支払っている。
 水道光熱費や家賃、食費で精一杯のところを、新車を買ってわざわざ苦しくしている。
 もともと、自己責任、借り手責任といえるだろうが、「こんな世の中でいいのかしら?」と思う。きっと彼は、いずれ破綻するだろう。
 ところが、誰もこういった事態になることを止めることはいないし、本人も個人事業者なのに経営者としての自覚がない。
 本人が破綻してしまえば、それで終わりということかもしれないが、社会全体に影響を及ぼすことはないのだろうか?
 確かに、直接的な影響はないと思う。だから、それらのローンが回収できなくなったところで、痛くも痒くもないのは事実である。
 しかし、こういった人たちが増えれば、最終的にはどこかで必ず堅実な人が負担することになる。たとえば、金融機関に公的資金を注入したことや、株主の負担や銀行の預金者が金利を低金利に抑えられているなど・・・。
 もちろん、「収入が少なすぎるのが一番の理由じゃないか?」といって、政府の責任にしたり、よく言われる「格差社会」のせいにしたりすることになるだろう。
 本当は、世の中全体が、収入がないのに安易に物を購入できることのほうが問題のような気がする
 いとこの友人にしたって、新車でなく中古で車を購入していれば、サラ金に手を染めなくても何とかやっていけただろうに・・・。
 貸し手責任・・・
 本当は、借りる側に対してのものなのだろうが、社会に対する貸し手責任が、今の世の中は問われているような気がする。