ホーソン実験

 診断士の資格を取ろうとしている人なら、必ず耳にする単語である。以前にも、「甘栗工場=ホーソン工場!?」と題して取り上げた。【http://d.hatena.ne.jp/unizou1972/20050906
 試験科目「企業経営理論」で、組織論の中の人間関係論に出てくる。

 ホーソン実験とは、シカゴにあるウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で、1924年から1932年にかけて行われた作業効率に及ぼす要因に関する実験。レスリスバーガーとディクソンにより、照明実験、リレー組み立て実験、面接実験、バンク配線作業実験が行われた。1927年以降メイヨーを中心とするハーバード・グループが実験に参加。結果、インフォーマル組織が作業効率に影響するということが明らかになり、職場の人間関係を形成する要素としてリーダーのあり方が注目され、リーダーシップ研究の端緒となった。

 「wisdom イノベーションキーワード」より【http://www.blwisdom.com/ikey/09/03/
 実はこのホーソン実験について、先日紹介した「こんな上司が部下を追いつめるー産業医のファイルからー【著者荒井千暁 文芸春秋刊】の「健全な職場風土を保つには?」に記述がある。
 診断士の試験勉強でも、こんなに詳しく7つの結論が出ていないので、引用させていただく。

  • 職場の活動は個人活動でなく、集団活動である。
  • 生産能率に大きく影響を及ぼす因子は、物的条件よりも社会的評価や組織体への帰属意識、あるいは非公式な人間関係である。
  • 従業員個人の欲求や感情は、職場の状況に左右される。
  • 職場内の非公式集団は、従業員の態度や習慣に影響する。
  • 従業員の態度や行動は、職場内外の社会的欲求によって決まる。
  • 従業員の不満は主観的なものが多く、客観的な事実を必ずしも反映していない。
  • 従業員は苦情を述べる機会を与えられるだけでも不満が減少する。

 荒井先生の要約によると、「個々人がバラバラ、帰属意識が低い、職場の雰囲気が悪い、職制(ライン)を超えたまとまりがない、社会的欲求が低い(慢性赤字、ヒマ)」といったものが、作業効率を落とす要素だという。
 「この好例が、コンビニエンス・ストアだ」と、先生は言う。

 一般的にどの従業員も素早い上に、マナーがいい。袋は不要と言えば、「恐れ入ります」と言う返事がくる。混んでいれば呼ばれなくても閉じているカウンターを開ける。ばらばらになっていたはずの陳列棚は、いつの間にか整理されている。

 荒井先生が関係者に聞いた話では、各店舗から送り込まれた新人に徹底的に社会的ニーズを説くそうである。それを、若者たちは、しっかり覚え、体験して身につけるという。
 そして、「忙しくとも社会的要求度が高く、順当に利益を上げている組織は不満も少なく、ギクシャクした部分は最低限に抑えられる」という。
 さらに、先生が「健全な職場風土を保つには?」の「コーチングとメンタルヘルス」でいう理想の上司像。
 チームをまとめること(マネージメント)、教えること(ティーチング)、必要に応じて助言すること(コンサルティング)、そして個人の能力を引き出す四要素が求められる。
 そして、荒井先生は重ねて、「30歳を超えるくらいの年齢になった部下に『仕事とはおもしろいものだ、やりがいがある』と感じさせるるかどうか。そこを上司は問われている。」という。

 思い起こして欲しい。何かをしたいと思って門をくぐってきたのは、今の若者に限らなかったはずだ。したいことがなかなかやらせてもらえないと悩む部下に何を告げられるか?何を伝えるか?何なら伝えられるか?
 手腕というより、部下に対する思いやりが問われる。開眼できないでいる部下がいるなら、あなたの手でしっかり開眼させることだ。
 上司たるもの汝の部下を愛せ!

 所詮、人間が寄り集まって、何かを成し遂げようとするのが組織。
 「この人のためなら・・・」と部下に思わせてしまえば、自然と知恵も湧き、効率のよさも出て、組織の中でお互いに足を引っ張ることもないのだろう。
 いまだそれほどの上司に会ったことはない(「硫黄島からの手紙」で渡辺謙演じる栗林中将がそんな感じがするが・・・)。
 自分がそのくらい魅力ある上司になれたらと思うが、・・・。