中小企業の資金調達3

 昨日は、若手社員との勉強会。とりあえず、自分が講師としての講義は最後だった。
 今まで改正会社法を教えてきたが、中小企業の資金調達について、最後に教えることにした。2005年と2006年の白書を中心に資料を作成したが、未完成で、結局、後日資料を完成して渡すことにして、作成が終わった資料で講義した。
 それでも、かなり膨大なものになってしまって、2時間の内容どころではなくなってしまった。勉強会自体それぞれに満足がいくものだったか不明だが、毎回出席した「自称未来のエースのN君」や「今時の若者には見られない超真面目なK君」の自己研鑽のきっかけになっているようなので、それなりに役目は果たせたかな・・・?と、ほっとしている。それ以外にも、中堅社員のS1君やS2君には、いろいろとサポートいただいて感謝している。
 それにしても、今回の講義で以前の金融機関とは変わってきている金融機関を知り、自分自身も勉強になった。
 例えば、2006年の中小企業白書の中では、次のように言っている。

 金融機関と中小企業の関係は、かつてのように中小企業が金融機関に一方的に依存する関係から、質の高いコミュニケーションを通じて、「情報の非対称性」を解消させ、中小企業と金融機関のそれぞれが互いを理解した上で迅速な資金供給や早期の経営指導等を行うという関係(リレーションシップ)に変化しており、こうした動きは今後一層進むことが期待される。また、関係の深さについても、「借入」という一時点だけでなく、創業や取引先拡大など、事業展開の様々な場面に広汎に及ぶようになってきている。
 こうした変化を踏まえれば、中小企業の側においても、「安定した資金供給」を実現するために必要なことは明らかである。現に、財務体質のよい中小企業ほど金融機関に対して積極的に情報提供を行っている傾向がある。自社の経営・財務状況はもちろん、技術力や事業の将来性等様々な情報について、金融機関をはじめとする第三者に対し正確かつ迅速に開示していくことは、中小企業の経営に役立つだけでなく、金融機関と中小企業の間に信頼関係を構築していくことにも大いに役立つ。

 リレーションシップバンキング*1の機能強化が言われ、「中小企業向けの貸出しの審査項目として3年前と比較して重要度が増した項目について見てみると、「物的担保の提供」や「代表者の保証」の割合は低く、他方「計算書類等の信頼性」、「技術力」、「代表者の資質」の割合が高くなっている。つまり、金融機関の融資審査においても、保全面だけではなく、企業の計算書類の信頼性への取組、企業の属性や代表者の資質といった定性面も審査項目として、これまで以上に重視するように変化してきており、いわゆるリレーションシップバンキング機能の強化が図られている。」という。
 つまり、企業としてのきちんとしたものを、財務面、企業自身の属性(業界での評判、計算書類の信頼性、技術力など)、や人物の属性(代表者の資質・・・「経営意欲」、「実行力」、「判断力」といった要素が融資審査において重要視)で判断され、それを持っている企業が生き残れる時代になったのだ。
 そして、「1回のみの借入れだけではなく、リレーションの構築を前提とした継続的な取引をするのであれば、自社の強みなどの企業の良い面のみを伝えるのではなく、自社の弱みなどについても銀行に伝えることも重要なことである。たとえ自社の弱みであっても、それを正しく認識していること自体は金融機関側から見て、むしろプラスに評価できる部分であり、それよりもそのような状態をふまえて自社ではどう対処しようと考えているかが、重要と考えられる」と白書はいう。
 企業も人と一緒なのだ。自分の強さだけを頼りにするのでなく、自分の弱さをさらけ出し、向かい合うことで、一層の飛躍が可能ということなのだろう。
 中小企業の資金調達については、一次試験のときに勉強したが、改めて白書を読み直して勉強になった。勉強会に感謝。

*1:金融審議会が03年3月に公表した報告書「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」によると、「必ずしも統一的な定義は存在しないが、金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することにより顧客に関する情報を蓄積し、この情報を基に貸出などの金融サービスの提供を行うことで展開するビジネスモデルを指すのが一般的」とされ、リレーションシップバンキングにおいては、貸し手の借り手に対する継続的なモニタリングなどのコスト(エージェンシーコスト)を軽減することができるうえ、借り手の経営をチェックし、貸出の劣化を防ぐことにより、貸し手、借り手双方の健全性確保を図ることができる。