組織暴力2

 「義理人情の世界に生きて、堅気の人に迷惑をかけることはしない。」なんて、そんな清水次郎長国定忠治のようなやくざはいなくなってしまった。
 もちろん、清水次郎長国定忠治のすべてを肯定するわけではないが、まったく今時の暴力団ときたら、そんな姿はどこにも見受けられないし、聞いたこともない。
 最近話題になっている振り込め詐欺。全国各地で多くの人がお金を騙し取られているという。
 また、TBSの報道特集で先日放映された「高級バイク窃盗団!手口巧妙 犯罪の瞬間」で知ったが、高級バイクの窃盗事件が全国で発生しているという。
 いずれも、何の関係もない堅気の人たちが、一生懸命働いて貯めたり買ったりしたものを、盗んだり、詐欺で奪い取られたという事件である。
 以前には、山口組旧五菱会系のヤミ金融事件というのがあった。
 闇金融で、弱っている人たちを、さらに追い込んでいく。
 いずれの事件も、暴力団が絡んでいるといわれているそうだ。
 これでは、やくざも、ただの犯罪集団である。
 ずいぶん前の話しになるが、融資先が倒産し、工業団地の中にある会社へとりあえず駆けつけると、門をしめたところに右翼を語る暴力団員が立って出入りをさせないようにしていた。社長が白紙委任状を渡したということだった。
 その会社には、倒産整理を受けた弁護士さんがいたが、その事実が判って、その弁護士さんは、その後、「白紙委任状を出すような会社の整理には関われない」と辞任したと聞いた。
 組織犯罪は、どうしてここまで野放図になってしまったのだろう?
 とはいえ、警察で組織犯罪に携わっている人たちは本当に大変だと思う。
 自分たちの人数は少ない上に、相手は何も失うものがない状況で、何でもお構いなくする奴らを相手にしなければいけないからだ。
 これからは、人力だけに頼らない工夫が必要だと思う。本気でやる気なら、きっと、いくらでもやりようがある。
 「今のやくざは、みんな、いい車に乗って、いい生活をしたい」というだけ・・・。
 だから、暴力団に資金がなかったら、誰もやくざになんかならない。
暴力団の資金獲得活動に対する取締りのために、平成5年警察白書によると、「課税通報制度」というのがあるそうだ。

(2) 暴力団の資金獲得活動に対する取締り
「警察は、暴力団の資金源を絶つため、暴力団の資金獲得活動に対する取締りを一層強化している。また、暴力団の膨大な収入に対して厳正な課税措置を行うことが極めて効果的であることから、税務当局との連携、連絡体制の強化に努めており、捜査の過程において暴力団の不正な所得を認知した場合には、その内容を税務当局に通報する課税通報制度の一層の効果的運用を図っている。」

 税務当局は、アンダーグランドマネーをどれだけ把握できているのだろうか。
 税務当局の職員も、警察で組織犯罪を取り締まる人たち同様、多くの取引を調べて公正・公平な課税をするというのには、今のような広範囲、国際的。電子的な取引が多くなった時代、人の懐に手を突っ込むような調査ができない時代だから大変だろう。
 それにしても、課税通報されて税金が出たとして、徴収までされているのだろうか?
 実際はどうだかさっぱり分からん・・・?
 12年11月25日付朝日新聞に「オピニオン観測点論説記者の目『伊で納税者番号を考える』」と題して掲載された後藤尚雄記者の記事を思い出した。

 「最新のIT(情報技術)を駆使した税務システムはいまや欧州一、いや世界一だ」。財務省のローマ歳入局長は自慢する。
 ローマ市南部の税務調査分析センター(Soge・i)訪れた。イタリアテレコムも出資する半官半民の株式会社だ。新しいコンピューターシステムが今年初めから稼動している。
 厳重なセキュリティーチェックを受けて中に入ると、職員がコンピューターの端末に一人の納税者カード番号をたたいた。職業、不動産や自動車をいつ購入したか。火災保険に加入しているか。過去の納付状況は・・・。画面には、納税者番号で名寄せされた個人情報の一覧が映し出された。
 付加価値税の納税番号を持つ全国五百万法人、業者の情報も一元管理されている。試しにミラノ市を指定した。商用トラックを所有しているが運輸業の登録はない。過去3年間に付加価値税の納税がない。いろいろな条件を入力すると、脱税の疑いのある百六十四業者があぶり出された。
 そこから先は財務省管轄の財務警察の出番である。場合によっては、軽機関銃も携行する。
 「脱税は社会的な不公正を生むだけではない。脱税企業が有利になり市場経済そのものをゆがめる」財務警察総司令部で付加価値税担当のニエッドウ隊長は語った。

 公正で公平な競争になれば、格差は生まれるが、安倍首相が所信表明演説で語った「新たな日本が目指すべきは、努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化せず、働き方、学び方、暮らし方が多様で複線化している社会、すなわちチャンスにあふれ、誰でも再チャレンジが可能な社会です。格差を感じる人がいれば、その人に光を当てるのが政治の役割です。私は、内閣の重要課題として、総合的な「再チャレンジ支援策」を推進します。」という言葉にあるように、人間性を見失わない社会であって欲しいと思っている。
 暴力団に入らざるをえなかった人も、再チャレンジして、全うに生きてもらいたいものだ。