住基カード3(パスポートの電子申請廃止)

 ここのところブログに取り上げている住基カード
 昨日も書いたが、「コスト高で“ダウン”、電子旅券申請を廃止へ・・・外務省」というニュースもあった。
 ニュースの要旨は、次のとおり。

 外務省は、インターネットを通じて旅券(パスポート)の申請ができる「旅券電子申請システム」を、システム維持に多額の費用がかかる上、利用者が少なく、旅券1冊当たりの経費が約1600万円にも上っているため、年内に廃止する。
 電子申請の利用が少ない背景には、「事前の準備が複雑」(外務省幹部)なことがあるようだ。申請するには、専用のソフトをパソコンに入れなければならず、住民基本台帳カードの情報をパソコンに読み込むための機器なども必要となる。戸籍謄本は別途、郵送しなければならないという。

 unizouは、昨日、「旅券電子申請システムは、導入に際し、その利用者の利便性にどこまで資するか、その予測が甘かったように思う。何でもかんでも電子化すればよいというものでもないのだから。」と書いた。
 昨日、会社でこれからハワイ旅行に行く同僚がいたことで、「パスポートの電子申請廃止」の話題になった。
 上司の一人が、「電子旅券申請を含めた電子政府への取組は、今が正念場なのかもしれない。韓国では、電子申告・電子納税などを含めた電子政府、電子行政が相当に進んでいる。日本も、こんな形で、やめてしまっていいのだろうか?」と発言をしていた。
 unizouも、昨日ブログで書いたが、「パスポートの電子申請廃止」だけでなく、本来政府は何を求めているのか、いろいろ考えてみた。
 「パスポートの電子申請廃止」だけをみれば、最初は、利用者が少なければコストが高くつくのは当たり前だし、「パスポートの電子申請」だけを見れば、いろいろ問題がある。
 しかし、「パスポートの電子申請」も、電子政府、電子行政の一環であり、最終的に国及び地方自治体の公務員削減や行政コストの削減へと通じて、国民の負担が減ることになる。
 少子化へと続く日本にとっては、今後、どうしてもやっておかなければならないことかもしれない。当然、システムのランニングコストを抑える必要はあるが、それは今回の“コスト高”とは別の次元の問題かもしれない。
 まず、先に省庁を超えて、政府全体として「住基カード」の利用者を増やすことを考えなければいけないのではないか。
 そういえば、企業経営理論の「製品ライフサイクル」で習ったが、導入期は「生産量が少なく、大量生産のメリットが活かすことができずにコストが高くなる。」と。そして、成長期、成熟期へと続き、コストが下がっていく。
 また、企業においても、経営情報システムで習ったが、情報システムの役割は、「ITは経営戦略の中の重要な要素」という位置づけになっている。
 それは、政府・自治体においても同様であり、今後、利用者(国民)を含めたITの活用は、今後の社会では重要なもののはずである。
 よくよく考えれば、「電子政府・電子行政が進まない」という背景には、省庁の縦割りの弊害もあるが、政府もマスコミがあまり乗り気でないということが一番の問題かもしれない。
 韓国で電子申告などの電子政府がものすごい勢いで普及している理由が利用者に対するインセンティブにあると言われているので、政府も同様の施策を強く打ち出せば、利用者が大幅に増え、コスト高という問題に対処できるのではないか。
 電子政府・行政の普及を阻害している要因には、住基カードに対するマスコミの姿勢も強く感じられる。どの申請も、住基カードの取得という第一のハードルがあるが、マスコミは「住基カードに対し積極的でない。」と勘ぐるりたくなるのも事実である。
 理由は、住基カードの導入当初に言われた、プライバシーの問題やセキュリティーの問題?かもしれない。そして、「住基カードを広めたくない。」というのが本音の話ではないのだろうか?
 それでなければ、公務員の削減などを含めた小さな政府を求めている多くのマスコミが、政府に対して電子政府や電子行政が進まないことをもっと声高に攻撃してもいいはずではないかとも思える。
 国民はどういう選択をすればいいのか、一体、政府は、国民にどんな便益を与えようとしているのか?
 政府に、将来の電子政府・行政に向けた信念があるなら、省庁を超えた取組をし、マスコミをも巻き込んで、利用者を増やすようがんばるのが一番かもしれない。